辛ければ、言ってください。
これまでとは、また違う熱が篭った声で。そう、言って。
でも。
その男はやはり詐欺師だから。
そんな優しい言葉とは裏腹に、その指は容赦なく、責めたてる。
彼の気持ちを、少しでも疑った嘘吐きの悪魔を断罪するように。
「……っ。ほん、とは、どっちが、いいの?」
昂ぶらされる気を、散らしたくて、悪魔はふと思った疑問を投げてみる。
「どっち、とは?」
緩やかな愛撫を施しながら、人は問い返してくる。
「今の俺と、さっきの、と」
「……どうして、そう聞くだけ無駄なことを聞くんですか」
「う、あ……っ」
罰のように、強い愛撫を与えられて、悪魔がうめく。
「……む、無駄な、ことって」
「どちらも貴方なのですから、どちらもいいに決まっているでしょう」
(?……そんなもんなんかな。よく分からないけど)
「……貴方こそ」
「ん」
身体を弄っていた両手が移動し、シュラの頬を包む。
口付けんばかりの至近距離で、じぃ、と瞳を合わされる。
「な、何?」
「本当は、どっちがいいのですか」
「え」
「僕は、どちらでも、構いませんが」
「は」
「貴方がそうしたいなら、僕が下……」
「うわ。ストップ!」
何だか、その続きは聞きたくなくて両手でライドウの口を押さえる。が。
その黒い瞳は必要以上に雄弁で、シュラはもうどうしていいか分からなくなる。
そりゃ、俺だって本来は男だし。お前は本当に綺麗だし。したくないって言ったら嘘になるけど。
「……ちょっとだけ、話、して、いい、かな」
腕の中に、居てくれるなら、とライドウが言ったので、仕方なく、その状態でシュラは話す。
不用意に触るなよ!と釘を刺して。
「……俺は、さ。未だに自分が「何」になったのか、ホントはよく分かってない」
謎の生物を体内に取り入れて、おそらくは脳幹の一部を乗っ取られる形で悪魔化して。
同じ生態を持つモノも居ないから、何がどうなるのか予測もつかなくて。でも。
「……よくある話だろ。異形のモノに犯されたら、拒否反応起こして死ぬとか狂うとかってやつ」
実際、CURSE時なんか、俺自身が狂うことだって、結構あったし。
だから、俺の仲魔には、人型の女性悪魔がほとんど居なかっただろ。あ、ピクシーとかは別だけど。
「CURSEで煌天の時とかでさ、……もしもってコトもあるじゃん」
あいつら、俺が襲っちゃっても、言うこと聞いちゃいそうだし。
……でも、それで何かあったら、俺、絶対に、自分を許せないし。
……なるほど、それで。
その気遣いで、あの煮ても焼いても食えない、油断もすきも無い、貴方至上のお取り巻き悪魔軍団
(男性率高し)が構成されてしまったわけですね。
と、自分のことは全部棚に上げまくったライドウは眉を顰める。
でも、故に、誰も貴方の愛を受けたことが無いと言うのなら、尚更に欲しいと思うのは、必然。
「……僕は、狂っても構いませんが」
貴方の愛をもらえるなら。
それは、貴方の仲魔もきっと同じ想いだったろうけれども。
「〜〜〜だから!大切なヤツを傷つけたくないんだって!分かれよ!」
それ以上、お前の口から言われると、止まらなくなりそうだから、頼むから。
「っ」
直球で。
大切だと、止まらなくなる、と、言われて。
ライドウは、カチリと自分の心臓が定まる音を聞く。
これは、貴方の想い、で、この胸の欠落のどこかが埋まった音。
何て、幸せで。何て、切なくて。そして、何て。
愛しい。