夜 第八夜 「埋」



辛ければ、言ってください。
これまでとは、また違う熱が篭った声で。そう、言って。

でも。
その男はやはり詐欺師だから。

そんな優しい言葉とは裏腹に、その指は容赦なく、責めたてる。
彼の気持ちを、少しでも疑った嘘吐きの悪魔を断罪するように。



「……っ。ほん、とは、どっちが、いいの?」
昂ぶらされる気を、散らしたくて、悪魔はふと思った疑問を投げてみる。
「どっち、とは?」
緩やかな愛撫を施しながら、人は問い返してくる。

「今の俺と、さっきの、と」
「……どうして、そう聞くだけ無駄なことを聞くんですか」
「う、あ……っ」
罰のように、強い愛撫を与えられて、悪魔がうめく。

「……む、無駄な、ことって」
「どちらも貴方なのですから、どちらもいいに決まっているでしょう」
(?……そんなもんなんかな。よく分からないけど)

「……貴方こそ」
「ん」
身体を弄っていた両手が移動し、シュラの頬を包む。
口付けんばかりの至近距離で、じぃ、と瞳を合わされる。

「な、何?」
「本当は、どっちがいいのですか」
「え」
「僕は、どちらでも、構いませんが」
「は」
「貴方がそうしたいなら、僕が下……」
「うわ。ストップ!」

何だか、その続きは聞きたくなくて両手でライドウの口を押さえる。が。
その黒い瞳は必要以上に雄弁で、シュラはもうどうしていいか分からなくなる。

そりゃ、俺だって本来は男だし。お前は本当に綺麗だし。したくないって言ったら嘘になるけど。


「……ちょっとだけ、(はなし)、して、いい、かな」

腕の中に、居てくれるなら、とライドウが言ったので、仕方なく、その状態でシュラは話す。
不用意に触るなよ!と釘を刺して。


「……俺は、さ。未だに自分が「何」になったのか、ホントはよく分かってない」

謎の生物(マガタマ)を体内に取り入れて、おそらくは脳幹の一部を乗っ取られる形で悪魔化して。
同じ生態を持つモノも居ないから、何がどうなるのか予測もつかなくて。でも。

「……よくある話だろ。異形のモノに犯されたら、拒否反応起こして死ぬとか狂うとかってやつ」
実際、CURSE時なんか、俺自身が狂うことだって、結構あったし。
だから、俺の仲魔には、人型の女性悪魔がほとんど居なかっただろ。あ、ピクシーとかは別だけど。
「CURSEで煌天の時とかでさ、……もしもってコトもあるじゃん」
あいつら、俺が襲っちゃっても、言うこと聞いちゃいそうだし。
……でも、それで何かあったら、俺、絶対に、自分を許せないし。


……なるほど、それで。
その気遣いで、あの煮ても焼いても食えない、油断もすきも無い、貴方至上のお取り巻き悪魔軍団 (男性率高し)が構成されてしまったわけですね。
と、自分のことは全部棚に上げまくったライドウは眉を顰める。

でも、故に、誰も貴方の愛を受けたことが無いと言うのなら、尚更に欲しいと思うのは、必然。

「……僕は、狂っても構いませんが」
貴方の愛をもらえるなら。
それは、貴方の仲魔もきっと同じ想いだったろうけれども。

「〜〜〜だから!大切なヤツを傷つけたくないんだって!分かれよ!」
それ以上、お前の口から言われると、止まらなくなりそうだから、頼むから。
「っ」

直球で。
大切だと、止まらなくなる、と、言われて。
ライドウは、カチリと自分の心臓が定まる音を聞く。
これは、貴方の想い、で、この胸の欠落のどこかが埋まった音。

何て、幸せで。何て、切なくて。そして、何て。

愛しい。




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