夜 第九夜 「嬲」



――― 目や口、みたいに、耳も、塞いで、しまえたら、いいのに。




「……あ。あぁ、……や。ぃや。あ。い、いぃ……っ」

聞き、たくない。こんな、声。……信じた、くない、それが、自分の、咽喉から、出ている、なんて。
身体の中を、蠢く、その白い指は、まだ単体?違和感は、無くて、さっきより、直接的な、快感?
……あぁ、さっきの、無茶、って。この為……か?



「あ。……そ、こ。い、ぃ。……あぁ、イ……ッ!」

コイ、ツ。多分、わざ、と、ポイント、かすめては、外して、やがる。おま、けに。
イカさ、ない、ように、ごていねい、に、タイミング、合わせて、握って、きや、がって。
お手柔らかに、って、言った、のに。ホン、トに、こ、の詐欺、師が……っ。



「い、いかげん、に。い、かせろっ!……う、ぁあ。や。いや、だ、やめ……っ」

く、そ。ああ、もう、解されて、いるのか、嬲られて、いるのか。頭ん中、ぐちゃ、ぐちゃかも。
……そう、いや、嬲られるって、酷い、漢字だよな。クラスメイトで、興奮してる、馬鹿、いたっけ。
今の、場合だと、同じ、漢字が、3つか?
んじゃ、もう、一人は、誰に、なる、んだ。同、じ形の、字と、し、たら、……雷堂、さん、か?


「っ」

え?
気付くと、目の前に二つの黒曜石。
軽く汗ばんで、髪が張り付いた白い額、微かに紅潮した頬。
その綺麗さに見蕩れていて、反応が、遅れた。

「今、何を、考えていましたか?」
きらりと、光る黒い瞳。でも、その輝きは……輝きも……黒い?
え?怒ってる?……何で?

「へ?……か、漢字の、こと?……って、おま、え……っ!」
話しかけ、といて、嬲る指、増や、すな……っ!

のけぞった首に噛み付かれ、吸い上げられて、それでもまだ追求は続く。

「質問を、変えましょうか」
今、「誰」のことを考えていましたか?

耳元で囁く、犯罪的に美しい声の温度は、氷のように冷たくて、炎のように熱い。

「……」
……読心術?

「シュラ?」
「……っ」
だ、から、嬲りながら、追求するのは、やめて、くれ。

「……え、と。昔、の、友達の、こと、とか」
「他、には?」
「雷堂さん、」

とか、という言葉はライドウの口の中に消された。





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