夜 第壱拾夜 「妬」



――― 哀しくて優しい貴方は、夢の中でしか、本当のことを言えない、のですね。



「……あ。あぁ、……や。ぃや。あ。い、いぃ……っ」

ああ、何て甘やかな声で、啼いてくれるのですか。でも、まだ、少し、苦しそうですね。
さっきのときに、解してはおいたの、ですが。足りません、でしたか。でも。それでも。
僕の指で悦びを得て。貴方の肌は色を変える。そして僕もまた。



「あ。……そ、こ。い、ぃ。……あぁ、イ……ッ!」

すみません。まだ、そう簡単に、どこにも、いってほしくないのです。
どうか、もうしばらく、キレイな声で囀る貴方を、見せてください。
嘘吐きな貴方が、僕の腕の中で本当のことを言ってくれる、数少ない機会、ですから。



「い、いかげん、に。い、かせろっ!……う、ぁあ。や。いや、だ、やめ……っ」

ああ、もう、愛したいのか、苛めたいのか、壊したいのか。それすらも判断がつかない。
こんなに、心が千切れそうなほど、惹かれるなんて。
今、貴方は何を考えて、僕の腕の中で、甘い声をあげて、いるのですか。
ふと、知りたくて。気を凝らしてみて、聞こえたのは。



「っ」

目の前に驚いたような金色の光。
いきなり僕が動いたから、驚いた、のですか?
それとも、「他の何か」に気を取られていて、「僕」に驚いた?

「今、何を、考えていましたか?」
落ち着けと、頭は言う。でも、心が言うことを聞かない。
ひどいひどいひどいひどいひどい。ひどい。僕の腕の中で貴方は、他の……。それも。

「へ?……か、漢字のこと?……って、おま、え……っ!」
嘘吐き。悲しくて悔しくて愛しくて苦しくて、解す指を増やす。

のけぞった首に噛み付いて、吸い上げて、まだ追求を続ける。

「質問を、変えましょうか」
今、「誰」のことを考えていましたか?

僕、ではない、「誰」の、ことを。……この、裏切り者。
ああ、この耳を噛み千切ってやりたい。二度と僕以外の声が届かないように。

「……」
答えない彼に、更に妬心がつのる。ならば、答えるように。

「シュラ?」
「……っ」
嘘をつけないように、するまで。

「……え、と。昔の、友達の、こと、とか」
「他、には?」
「雷堂さん、」

その言葉だけは、聞きたくなくて、唇でその残酷な口を塞いだ。






第拾壱夜

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