「ね、ゴウトさん」
『何だ?』
「ライドウって、いつから瑕があるんですか?」
『……気づいたか、……いつ』
ボルテクスで、こいつに命をやったとき。
……あれ?何か、おかしい、って思った。
いくら飢えていても他人の命のエネルギーなんて、結局は異物。
初めは拒否反応ぐらいあるだろうに。
「こう、何と言うか、元々空白があるところにポンと埋まったって感じで」
『……そうか』
「でも、確信したのは。今日、雷堂さんに、会ってから、です」
『……なるほど』
違う時空のドッペルゲンガー。
多少の差、こそあれ、本来は同じモノであるはず、なのに。
……違った。
あの、美しい瑕。最初はライドウと間違えて、いつ怪我したのかって、驚いたけど。
正直……見惚れた。あまりに、綺麗で。
怒られるかもしれないけど、似合ってて。
ああ、この瑕はあるべくしてあるんだ。これでこのヒトは完成してるんだって、思った。
こいつ、それを気づいてた?
傷ついてた?
その、違いに。
……多分、こいつには、心にあるんだ。瑕が。
見えないから、癒すこともできなくて、ずっと、今まで、そのままで。
ああ、ずっと、痛くて、辛かった、だろうに。
「自分では、気づいてない、んですよね?」
『我が会ったときには、既にああだった』
「……治せなかったんですか?」
『身体の瑕とは違う。心のそれは、難しい』
だから。お前は。俺の入れた、命を、勘違いして。……俺を、好きだ、なんて。
たまたま、それが、お前の心の瑕に、隙間に埋まったから。
――― 俺は。そのままでも、いいって、思ったのに。
あのまま、お前の中に命を残して、消滅してても、良かった、のに。
「私の命数、戻さないほうがいいですか?」
『そういうわけにもいくまい』
「……うん。結局はダミーですもんね」
『だみぃ?』
「ニセモノって、ことです」
そう。所詮、ニセモノだ。俺の存在は。そして、お前が俺に向ける執着も、きっと錯覚。
でなけりゃ、お前、みたいに、綺麗な、人間が、なんで、俺、みたいな、醜い、悪魔を。
……はやく、それに気付けば、いいのに。
俺が、これ以上、お前を愛してしまわない、うちに。
離したく、ない、なんて、バカなことを、思ってしまわない、うちに。
「でも、何となくだけど、同化?してないですか?」
『……うむ』
「無理に戻したら、壊れる、かな?」
『分からぬ。だが、多少は精神が乱れる、のは間違いないだろうな』
思ったより、俺がダメになるのが、早すぎた。
お前が俺に命を返してくれる前に。
瑕が見つかればって。
思って、たの、に。
「瑕を見つけて、認識して、治してから返してもらえばいい、かな」
『難しいが、それが最善だ……世話をかける』
「ううん。元はと言えば、私のせいだし。考えなしに、エネルギー入れちゃって」
『……それは違う。我の、せいだ』
お前が、自分で、自分の瑕に気づいて。
自分で、それを、埋めていかないと。
いつか、お前は、壊れる。
――― 今、みたいに。