「……シュラ」
「ん?」
花ばかりを気にする貴方が、憎らしくて。
僕の、この抑えがたい衝動を、少しでも知ってほしくて。
――― 好き、です。
振り向いたあどけない横顔の、唇を奪いながら、何度も、そう囁いて。
鉢を抱えたままと知りながら、我侭な白い指は、不埒な動きを、悪魔の肌に描く。
「ん……っ」
震えて、耐えたような甘い声をあげる肢体を深く、抱き締める。
ヒトの少年の態をとる時の、彼は。
昼の光の下では、ただ、明るく朗らかで。傍にいるだけで暖かくなる、陽だまりのようで。
その真実の姿を疑うほどに、眩しいのに。
なぜ、この月の下では。
こんなにも。
僕の胸をしめつけるほど、儚い。
「いか、ないで」
どこにも、いかないで。
僕を、おいて、いか、ないで
唐突な言葉に、嘘をつけず。
ビクリと、反応する貴方は。哀しい。
哀しくて、キレイで、儚くて、切ない。
散らないよう、傍でずっと見守りたいと。
僕こそが、誰よりも、思って、いるのに。
――― 貴方は、僕が、咲かせる、花、なのに。
「ライ、ドウ、ちょ、待っ……て」
花が、と、身を捩るあなたの手の中には、僕に似ていると貴方が言った花の、鉢。
では。
"僕"を抱く貴方を、僕が抱いている、のか。
どこか、おかしくて。でも、どうせなら。
この花の僕ではなく。
「本当の、僕を、抱き締めて、ください」
ついと手を伸ばし、その震える手から苦も無くそれを奪うと、ヒトはコトリと自分の鉢を床に置いた。