こいつは、何て、綺麗、なんだろう。
今更だって思うけど、やっぱり、見惚れる。
月の光を受けたその肌は、昼よりも、もっと透き通るように白く。
何かを乞うような、請うような、恋うような、唇は艶やかに、紅く。
闇に溶けていきそうな髪も、星のように光る瞳も、その姿が落とす秀麗な影さえ。
黒く、冥く、闇い。
――― この最凶の悪魔が慄くほどに。
コトリという音に、ふと、その男に似ている花を見る。
心なしか、上を向いてきた蕾。
もう、すぐ、かな。
この綺麗なヒトと、この花を並べて見たら、どれだけ美しい、だろう。
それは、きっと。
心を奪われてしまいそうな、ほどに。
くす。
それこそ、今更すぎる。
だって。
気を逸らしたその少しの時間に。
クイ、と。
白い指に顎を捕らえられる。
あ、と思う間もなく、また抱きすくめられて。
ですから。
と、どこか拗ねたような声が唇に落とされる。
「本当の、僕を、見て、ください」
僕だけを、と。
何度も、念を押すように、その音を重ねられて。
俺は。
お前だけしか、見てない。
――― もう、ずっと。
と。心の中だけで呟いて。
悪魔は、自分の心を奪ったままのヒトに、ゆらりとその身を委ねた。