夜の王 8



どくり、と注ぎこむ己の欲を感じながら、ヒトの耳に落ちるのは、あえかな悪魔の甘い息

とまら、ない
この欲も、この想いも、この不安も

冥く翳る思考をよぎるのは、愛しい悪魔が、うかりと落とした、言葉

耳にこびりついて離れない、残酷な音

「これが最後」

嫌な予感にゾクリとする。

いや、だ
離さない、放さない、はなせ、ない
どこにも、行かせない

この花は
僕の、手の中で
ずっと、咲かせた、ままで

どんなことを、しても
何と、引き換えにして、でも

たとえ
貴方に、疎まれても

そう、決めている、のに
貴方に心を奪われた、あの時から



貴方をはなしたくなくて
僕がこうしていることを知れば

貴方は、悲しむ、だろうか


悲しんでくれれば、いい

もっと
憂えて、くれれば
感じて、くれれば

そして、早く
囚われて、くれれば
いい

届くところ全てに口づけを落としながら、悪魔の哀しげな吐息にヒトの心が切り裂かれる


お願いです
もう
こんなに
僕を
乱さないで


辛いのです
まだ

貴方が
愛しすぎて



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