逢魔ガ時 3



シュラの身体から溢れ出る、その赤いものはじわりじわりと、地面を覆っていく。
にも、関わらず。
仲魔の魔法はおろか、回復アイテムすら使おうとせず、静止したままの、シュラに違和感を感じる
ライドウたちに。
「鳴海さんが待っています。二人とも、早く、帰ってください」
彼は。それだけを言った。背中を向けた、そのままで。

……クス。
(必死だね。カオル(・・・)。でも。「させない」よ)

「「動クナ。ソコノ人間共」」

その幼い音がライドウたちに向かって束縛の声を響かせ、シュラの表情が激しい動揺を見せる。

「……何を?ボウ」
「ね。カオル。ボクにもショウカイしてよ。そのヒト」
どこか無表情にその子が言うと、シュラはビクリと体をこわばらせる。

……脅えている?畏れている? この、シュラが? ……「何」を?

動かぬ態で違和感をつのらせるライドウ達の前で
だってさぁ。と
無邪気に子供は嗤う。

「そのヒトのせいなんでしょ」
「……違う」
「ボクがおきたときに、キミがボクのソバにいなかったのは」
「違う、ボウ!こいつは関係ない!」
「そのトキの、ボクのきもち、わかるかなあ」
「……すまない」

ホントにキミは忘れっぽいね、と、また、子供は嗤う。

また(・・)おしえてあげないと (・・・・・・・・・)、わからない?」
「……っ」
「キミは、ボクのもの。……でしょ?カオル」
「……ああ」
俺は、お前の「()」だよ。ボウ。
そう言って、跪き、頭を垂れたシュラに。
ふふ、と。
よくできましたと言わんばかりに子供は満足そうに笑い。
顔をクイと上げさせると、じいっとその瞳を覗き込む。

――― また、キレイになったんだ。……ボクのしらない、アイダに。と。
冥い声で呟いた。その一瞬後に。楽しげに言う。

「じゃあ、さ。カオル。ゲームしようよ」
びくり、とシュラが震えたのが分かる。
「何、を?」
微かに震える声を聞いて、嬉しそうに愛しそうに子供の瞳が輝く。
「そうだね。10プン、いや5フン。……1プンでいいよ。コエをださずにいられたら」
そいつ、見逃してあげる。

蒼白な顔のシュラが、小さくコクリと肯いたのを、見るか見ないかの内に。
「ハジめるよ」
――― 今日は人間の観客が居るから、やりがいがあるね。と。
子供は嗤い。

「っ!ライドウ!目を瞑……」

「オソいよ」

もう。



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