逢魔ガ時 22



ふ。

……憎い?

そうか、憎いのか。

……ならば、憎めばいい。

傷つけられたなら、傷つけ返せばいい。

信じてもらえぬなら、お前も信じなければいい。

同じ目に遭わせてやれば、分かってもらえるかもしれぬぞ。

お前の、その、想いを。痛みを、苦しみを、哀しみを、憎しみを、な。



◇◆◇




「お願い、泣かないで。ライドウ」

優しい、声。気遣うように肩に触れる、しなやかな指先。

「ね、お願い。……心、落ち着かせて」

その、優しすぎる音が、感触が、僕の壊れた心を、ギリギリと締め上げる。


……落ち着け、と。言うのですか。
それは、僕の、記憶を奪えないから、ですか?

ね、え、どう、して、そんなに冷静で、居られるの、ですか?
僕が貴方を忘れてしまうことなど、貴方には何の痛痒にも、ならない、のですか?

僕は、こんなにも、苦しい、のに?……貴方は、平気、なのですね。
きっと、貴方が、僕を、愛して、いないから、平気、なの、でしょうね。

……ああ、いっそ。貴方を憎んで、しまいたい。

憎んで、しまえれば。

――― そうだ。憎めば、いい。

……憎めば、楽に、なれる?

――― 無論だ。探偵。

甘美な誘いを囁く、どこかで、聞いた、声。
なぜ、そんな言葉を受け入れてしまったのか、自分でも、分からない。


だが。


「……あ、なた、こそ……っ!」
「ライドウ?」


だが、気付けば、僕は何かを叫んでいた。



――― けして、口にしてはならなかった、言葉を。





◇◆◇




「貴方こそ……っ、僕を、愛してなど、いない!」
「ライ、ド……」

……愛していれば、記憶など奪わないはずだ。


「貴方は、貴方が傷つくのが怖いだけだ!……だから、逃げて、逃げ続けて……」
「……」

……愛していれば、僕の心が真実であることを分かってくれるはずだ。


「貴方が愛しているのは自分だけだ!自分を守るために、誰の愛情も信じないで!」
「「……やめて、デビルサマナー」」
『……よせ、ライドウ』

……僕が、悪いんじゃない、貴方が。


「都合が悪くなれば、記憶を奪って、人の心を、もてあそ、んで」
「「ソレ以上、言ウナ!悪魔召喚師」」
『ライドウ、やめろ!』

……僕を受け入れてくれない、貴方が悪いのだ(・・・・・・・)


「貴方の、そんな、偽物の愛情など、僕は、いらない!」


もう、いらない!!

僕を、信じてくれない、貴方など、いらない!!!





「「……ならば。もはや、けしてお前には、我等が主を渡すまい。 主が、何を、望まれようとも」」

『ライドウ!いいかげんにしろ!!』

自分が、何を言ってるのか、分かっているのか!!、と。

心の底から焦ったゴウトの声の響きに


は、と。




――― 我に、帰った。



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後書き反転

満を持して、出てこられました。……ええ、9月ですから。(え?)

「「  」」は、出たくても出て来れない彼らの叫びです。読みにくくて、すみません。
……好きな仲魔を随時脳内設定お願いします……。