逢魔ガ時 24



ビチャリ、と、音がした。




何かを投げ捨てた?
斬り捨てた?

貴方が?
何を?



……いや、違う。
斬ったのは、僕だ。



ズタズタに傷ついて、ちぎれそうな哀しい魂を、その心ごと、斬ったのは。



そして、貴方は、それを。
自分でも気付かずに大事に守り続けていた、それを。



捨てたのだ。



僕が、それを、偽物だと、言った、から。
僕が、いらないと、斬った、から。



だから



――― 捨てさせたのは、僕、だ。























実に見事だ。探偵


依頼人の声が、聞こえてくる。


(まこと)に、素晴らしい。


なぜ、僕は、さっき、気付かなかった。
この音が、最後に残った分体のソレであると。



これまで我等がどれほど手を尽くしても、けしてコレはそれだけは手放さなかったものを。
お前はたった数言で、いとも簡単に、捨てさせてくれた。

ふ。

やはり、お前を選んだ私の目に狂いは無かったな。



――― もう、コレは、未来永劫、 身も心も()も、我等のモノだ。

心から、礼を言おう。コレの人としての魂を完膚なきまでに"討伐"し。

永遠の束縛を、この真の悪魔に齎してくれた、最大の功労者に。





……喜ぶがいい。報酬は、弾んでおくぞ。探偵。



報、酬?


私が出した "依頼"、のな。





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帝都top


後書き反転

老閣下は、利が見出せないことには手を出さない冷徹な方だと、思うのですが。
その方がわざわざ帝都まで行って、自分の目で確かめて依頼を出した理由を、お聞きしてみると。
……こういう話になりました。で、この方の中では、あの”依頼”は実は完了していなかったと。

最初から最後まで利用する気、満々で、それで「愛玩」でもあっさりと送り出したようです。

これで御三方とも、各々、心と、身体と、魂を得られたので、とりあえずご満足とのことです。
そしてヒトとしての彼を完全に壊したのは……やはり死を導く彼であったわけで。

でも、倦んだ生は死よりも悲惨ですから。破壊からの再生が、彼のテーマですから。
冬 来たりなば、春 遠からじ、ですから。

ここから、ですよ。