ビチャリ、と、音がした。 何かを投げ捨てた? 斬り捨てた? 貴方が? 何を? ……いや、違う。 斬ったのは、僕だ。 ズタズタに傷ついて、ちぎれそうな哀しい魂を、その心ごと、斬ったのは。 そして、貴方は、それを。 自分でも気付かずに大事に守り続けていた、それを。 捨てたのだ。 僕が、それを、偽物だと、言った、から。 僕が、いらないと、斬った、から。 だから ――― 捨てさせたのは、僕、だ。 実に見事だ。探偵 依頼人の声が、聞こえてくる。 なぜ、僕は、さっき、気付かなかった。 この音が、最後に残った分体のソレであると。 これまで我等がどれほど手を尽くしても、けしてコレはそれだけは手放さなかったものを。 お前はたった数言で、いとも簡単に、捨てさせてくれた。 ふ。 やはり、お前を選んだ私の目に狂いは無かったな。 ――― もう、コレは、未来永劫、 身も心も 心から、礼を言おう。コレの人としての魂を完膚なきまでに"討伐"し。 永遠の束縛を、この真の悪魔に齎してくれた、最大の功労者に。 ……喜ぶがいい。報酬は、弾んでおくぞ。探偵。 報、酬? 私が出した "依頼"、のな。 next→ ←back 帝都top 後書き反転 老閣下は、利が見出せないことには手を出さない冷徹な方だと、思うのですが。 その方がわざわざ帝都まで行って、自分の目で確かめて依頼を出した理由を、お聞きしてみると。 ……こういう話になりました。で、この方の中では、あの”依頼”は実は完了していなかったと。 最初から最後まで利用する気、満々で、それで「愛玩」でもあっさりと送り出したようです。 これで御三方とも、各々、心と、身体と、魂を得られたので、とりあえずご満足とのことです。 そしてヒトとしての彼を完全に壊したのは……やはり死を導く彼であったわけで。 でも、倦んだ生は死よりも悲惨ですから。破壊からの再生が、彼のテーマですから。 冬 来たりなば、春 遠からじ、ですから。 ここから、ですよ。 |