はっきりとは、分からない、けど。もう、シュラちゃんは今までのシュラちゃんじゃ、無い。
もう、手の届かない、何か、になったんだな、って、俺でも分かった。
……本当はライドウも気付いてる。気付いていない、わけ、ない。
でも、認めたくなくて、認められなくて、必死で目を閉じてる。
優しいシュラちゃんが巻いた、目隠しの下で、綺麗な夢だけを見ようと。
「……きっと、ライドウがシュラちゃんを助けようと、手を伸ばしちゃったんだろう、ね」
でも、きっと。シュラちゃんは、分かってた。今のライドウに、二人分を支えるのは無理だって。
だから、きっと。自分なら、平気だからって、その手を振り払って。
「……っ、それ、で……っ!」
少年の声は、もう一人の彼を代弁するように軋む。
「ライドウが手を伸ばしてしまったことも、自分がその手を振り払ったことも、忘れさせた、のか!」
ライドウが苦しむから。
「……だろうね」
「……自分が崖の底に落ちてしまった、ことも」
「だね」
「……っ。それは、間違って、いる」
「……かもね」
「そんな守り方をされても、我なら、嬉しくは、無い!」
「……でも、あの子には、それしか、できなかったんだよ」
「……っ」
それに、さ。雷堂くん。
……それに?
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