「ねえ。まだ、戦うの」
「最初っから、そう言ってるだろうが!」
(じゃあ約束だから、俺の名前を教え……)
(待った!)
「って、いきなりストップかけて。異界まで移動して」
サシでやりあって、勝てたらでいいって、言っても、さぁ。
困ったなぁと頭をかくシュラには一向に戦闘時らしき緊張感はゼロだ。
「なあ。もう、分かってるんだろ。キョウジ。俺は、もう」
(ああ、分かってる。分かってるさぁ。オマエはもう)
でも、そんなこたぁ、今は、どうでもいい。
「俺は、ただ、今のおめぇの全力を、見たいだけだ」
「そんな、無茶な」
「なあ、どうやったら、本気を出す?」
「だから、無茶だって」
「本気で戦う気にして、やろうか?」
「……え?」
怪訝そうに瞬く金の瞳。それを赤く。真っ赤な炎の色に染めてやりたい。
「おめえが本気を出す呪文。俺は知ってるぜ」
「何を、キョウジ」
「なあ、最強の悪魔。おめぇの大切な大切な」
――― ライドウを、殺して、やろうか。
◇◆◇
一瞬だった。
キラと赤く光った瞳に、ああ、綺麗だと見惚れたすぐ後に。
ピシピシと大地に亀裂が入って、そこから吹き出す赤い炎がコイツの怒りそのままに俺を。
ああ。こりゃ死ぬな。こんな力、俺のソドムの火ぐらいじゃ何のタシにもならねぇ。
でも。こんなきれぇなモンを見ながら、死ねるなら、まあいいか。
そう。それ以外に大した感傷も無く、覚悟を決めた俺様の耳に入ってきたのは。
「ダメ!ダメだよ!!キョウジ!!!かないっこない!!!死んじゃうよ!!!」
俺のピクシーの悲鳴だった。