凪 3



「くすん。くすん。ごめんなさぁい。シュラ」
「ああ、もう泣かないで。ピクシー。メディアラハンありがとう。もう痛くないよ」
「で、でもぉ、シュラのきれいな手がぁ」
「すぐに良くなる。だから、もう泣かないで。ね」
結果的に自分の魔法で大事な大事なシュラを傷つけたことで、大パニックのピクシーは、いつまでも泣き止まず。

「わ、私もごめんなさぁい」
「ハイピクシーも。気にしないで。ね。きれいな着物が汚れるよ」
「ううん。こんな着物より、あぁ、きれいなお手々がぁ。痛そうだぁ〜」
「だから、ホントにすぐに治るから。ね。泣かないで」
同じく、うっかり触りたくなったほどの美少年を傷つけてしまったと、ハイピクシーもショックで涙が止まらず。

「私からもごめんなさいです。シュラさん」
「凪さん。いや、俺も不注意だったんだし」
「私がきちんとこの子を止めなかったから。デビルサマナー失格のセオ……」
「あああ、な、泣かないでください〜。貴女みたいな可愛い人に泣かれたら、どうしていいか分からなくなっちゃいますよ〜」
初対面の、それもとても親切な優しい人にこの場の全ての被害をおっかぶせてしまったと、凪も猛烈な自己嫌悪の疾風怒涛真っ只中で。

とまあ、よっぽどか、どこぞの魔王なり、邪神なり、妖獣なりと戦っているほうが楽だ〜!と
悲鳴を上げたくなるような過酷な状況にシュラは置かれていた。
ちなみに。何度か、助けを求めるようにライドウを見たが、色々な要因で絶対零度と化している
ライドウの表情に、その度に諦めたように溜息をついた。



『助けてやらんのか?ライドウ』
さすがに、見かねたゴウトが助け舟を出す。

「……」
『だから早く帰れば良かったであろ』

「……」
『仕方ないだろう。ヤツはルシファーを落としたほどの超天然たらしだぞ』

「……」
『あの傷は見ているだけでも辛いが、ヤツならいずれ治るだろうし』

「……」
『そもそもヤツがこの建物を守ってくれたのだから、感謝しこそすれ』

「……」
『おい!……いくらシュラでも、今の状態で、あの傷ではこれ以上辛いぞ』

「……分かってる」

そして、ようやく絶対零度を嚥下し、ライドウは3人のナキサワメに囲まれて動けないシュラを救出に向かった。


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ちょっと目を離した隙にナンパ(本人無自覚)はしてるわ、怪我はしてるわで。