「ああ、ごめん。凪さん。そう言えばライドウに用事で来ていたんだよね」
俺ばっかり独占してたら、ライドウに殺される、ライドウもごめんごめん、と
笑いながら
席を立とうとするシュラを、またしても色々な意味で睨みつけたライドウだったが。
「……っつう!」
「シュラ!」
怪我を忘れて右手で身体を支えようとしたシュラが倒れかける。
寸でのところで、傍に居た、ライドウが身体を受け止めた。……が。
妙に慌てて離れようとするシュラに怪訝そうにしたライドウは、その直後、あることに気づき、思い切り眉を顰めた。
「シュ」
「ライドウ!……俺、ピクシー達と屋上に行ってるから!後はほら!若いもの同士でごゆっくり!!」
何かを言いかけたライドウを、その瞳の色と言葉で静止し、シュラは、凪に手を振りながらドアを出て行った。
「……頼む。ゴウト」
『承知した。見てくる』
そのやり取りだけで、お目付け役はシュラの元へと向かい、部屋には凪とライドウが残されるが、
ライドウはドアを見つめたまま微動だにしない。
「ライドウ先輩?」
怪訝そうな凪の声にライドウが解凍される。
「あ、凪。いろいろと済まなかった。せっかく来てもらったのにバタバタと」
「いえ、そもそもはあの子が悪戯したのがきっかけのプロセス。本当にシュラさんには申し訳なく」
「……いや。きっと大丈夫だから。彼なら本当にすぐ治るだろうし」
そのライドウの応えに凪が考え込む。
「凪?」
「ライドウ先輩。あの、シュラさんは。もしかして―――」
「……それは言わないセオリーでお願いする」
見上げる青い瞳に、かちりと合わせる黒い真摯な瞳。
「なるほど。……分かったのプロセス」
「ありがとう」
にこりと笑う凪に、ライドウも微かに微笑んで礼を言った。