凪 5



「ああ、ごめん。凪さん。そう言えばライドウに用事で来ていたんだよね」
俺ばっかり独占してたら、ライドウに殺される、ライドウもごめんごめん、と
笑いながら 席を立とうとするシュラを、またしても色々な意味で睨みつけたライドウだったが。

「……っつう!」
「シュラ!」

怪我を忘れて右手で身体を支えようとしたシュラが倒れかける。
寸でのところで、傍に居た、ライドウが身体を受け止めた。……が。 妙に慌てて離れようとするシュラに怪訝そうにしたライドウは、その直後、あることに気づき、思い切り眉を顰めた。

「シュ」
「ライドウ!……俺、ピクシー達と屋上に行ってるから!後はほら!若いもの同士でごゆっくり!!」

何かを言いかけたライドウを、その瞳の色と言葉で静止し、シュラは、凪に手を振りながらドアを出て行った。

「……頼む。ゴウト」
『承知した。見てくる』
そのやり取りだけで、お目付け役はシュラの元へと向かい、部屋には凪とライドウが残されるが、
ライドウはドアを見つめたまま微動だにしない。

「ライドウ先輩?」
怪訝そうな凪の声にライドウが解凍される。

「あ、凪。いろいろと済まなかった。せっかく来てもらったのにバタバタと」
「いえ、そもそもはあの子が悪戯したのがきっかけのプロセス。本当にシュラさんには申し訳なく」
「……いや。きっと大丈夫だから。彼なら本当にすぐ治るだろうし」

そのライドウの応えに凪が考え込む。

「凪?」
「ライドウ先輩。あの、シュラさんは。もしかして―――
「……それは言わないセオリーでお願いする」
見上げる青い瞳に、かちりと合わせる黒い真摯な瞳。

「なるほど。……分かったのプロセス」
「ありがとう」
にこりと笑う凪に、ライドウも微かに微笑んで礼を言った。



next→

←back

帝都top




「若いもの同士でごゆっくり」って大正時代では通用するのだろうか?