Balance 12



ん・・・っ」

硬く拘束された腕の中で、長い黒髪の(とばり)の内で。
下僕の深く長く、激しい口付けに翻弄される主は甘く、その身をよじらせ。

壊せ、という命令を受諾するなり、主人を深く、強く抱きすくめた罪深い犬は、 愛しい口内を舌で侵し続けながら、今まで一度も触れなかった主の後頭部へ、そっと右手を伸ばす。

、ぁっ、」

そろり、と角の先端に当てられた指は、そのまま繊細にその脈をたどる様に動き。
弱点へのいきなりの刺激に、堅く閉じていた瞳を思わずと開いたシュラの視線の正面には、嬉しげに、愛しげに、けれどどこか狂気を含んで笑む、クー・フーリンの黒い瞳。

そのまま、瞳を、視線を囚われたように合わせながら。
そっと、角を握られ、摺られ、時にクイと爪でなぞられて。舌を絡めて、甘くつつかれ、吸われて。
その、後ろからの指戯による刺激と、内で蠢く甘い舌のぬめりが与える、湿った快楽に。

熱く濡れた、生きた短剣にこの身を刺されているようだと、少年は思う。
思って、その想像に、身を震わせる。

ああ、きっと、俺は。
この黒い短剣の柄を引きぬけば、壊れて、瞬時に塵となり、消え去るの、だろうという、幻想に。

――― 震える。


その震えをどう、受け取ったのか。
ゆっくりと、主の体を傷めぬように寝台へと横たえて、犬の左手は主の首の紋様をなぞる。

「主、さま」
「ぁ、リ、ン」

ピチャと舌で水音をたてながら、空気を求めて喘ぐ主の呼吸を確保してその甘い声を堪能し。

「愛して、おります。主、さま」
どうか、貴方の望みどおり、壊れてください。私の腕の、中で。

――― 私の、望み、どおり。

感じやすい耳の襞を、血潮を美しく透かす鎖骨を、既に尖った胸の先端を、少し性急に なぞり、
甘がみし、舐めあげるその間にも、延々と、告げられる愛の言の葉に、少年の体は熱く熔ける。

「ひ・・・っ、あ、あぁっ!」

蕩け、淫猥にひくつく内は、必要以上に焦らすこと無く潜り込んだ指に翻弄され、 その切ない刺激に甘く啼きながら、まだ足りぬと不満を叫ぶ体に、忠実な僕は言葉を請う。

「何を、望まれますか、わが、主」
どうか、ご命令を。

ゆっくりと、耳に注ぎ込まれる、優しい残酷な問いかけに。
挿れろ…っ、オクまで、ハヤ、く、と喘ぐ、あえかな言葉は最強の呪文と化す。

「仰せのとおりに」
「あぁっ、リン・・・ッ」

待ちかねたように、細い足首を強く掴み、高く残酷に広げたその中心でひくつくソコに、
もはや惑うことも無く、命令どおり、深く、奥まで突きこまれた下僕の槍は。
得られた快楽に震えて応える主の腰と共に激しい動きを見せた。




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