堕天 3




「『ハトの争いは残酷である』―――だったかな」

瞬時に何百もの天使を屠ったシュラの周りに、散った羽が雪のように舞い落ちる。
優勢だった天軍はシュラ一人の参入で、一気に瓦解した。

「『致命傷を与える爪も牙も無いゆえに、徒に無数の傷をもって相手を嬲り殺すしかない』
――― でしたか」
「よく知ってるね。さすが天使様。地上のコトにも博学?」
「・・・。教えてくださった方が居たのです」

唐突に背中からかけられた言葉に驚くことも無く、シュラは振り向いて、にこりと笑い、
その笑顔を見た天使は、どこか苦しそうに眉を寄せた。

「お前がウリエル?」
――― はい。腕は、治られたのですね」

「ああ、お前が切ったんだったっけ?」
――― 記憶が?」

「戦いに不要なコトは消去された」
「・・・そうですか」

痛ましいものを見るような視線で見る大天使に、シュラは頓着無く言葉を続ける。

「それより、もう退かないか?俺は無駄な争いは嫌いだ。」
「無駄な、争い、ですか」
「ハトの喧嘩を繰り返しても無意味だ。だろ?」
――― ええ、でも」



私には意味があるのですよ、人修羅!!


そう叫んで切りかかるウリエルの刃を、シュラはあっさりとかわす。
何度攻撃してもかわすだけのシュラにウリエルは叫んだ。
「なぜ、反撃しない!臆されたか!!人修羅!!!」

ガキン。
次の攻撃を手で受け止めたシュラは、そのままウリエルを引き寄せる。
「じゃあ、なぜ、本気で攻撃しない?ウリエル」
耳元で優しく囁かれ、硬直するウリエルに更に畳み掛ける。
「時間稼ぎ?」

それとも、他に何かあるの?


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