貴方は何も変わらないまま、そこに立っておられた。 あの時。 貴方が闇を選ばれ、私を鳥篭から放たれた、あの時。 貴方の腕を離そうとしない私に哀しげに微笑んで 「お前はお前の天にお帰り。ウリエル」 そんな残酷なことを私に命じられた、あの時のままの笑顔で。 ――― 憎かった。 私のためだと笑って、平然とご自分の腕を切ってしまわれた貴方が。 貴方の傍で貴方の為に戦える幸せな悪魔達が。 何よりも。 堕ちても貴方の傍に居たいのだと言えなかった、あの時の自分が。 貴方の腕を持ち帰った私は、貴方の思惑通りに、英雄として天に迎え入れられた。 以前に貴方の籠から解き放たれた、ミカエルやガブリエル、ラファエルのどこか痛ましい視線を 受けながら、私は憎しみのままに悪魔軍と戦い、そしてこの地位に据えられた。 貴方を思わない日は無かった。 天国という名の地獄に、私をつき落とした貴方を。 そうして降り積もる憎しみは凝り固まり、やがてたった一つの望みになった。 ――― 会いたい。 敵としてでもいい。 悪魔軍を追い詰めれば、きっと貴方に会える。 もう一度、貴方に、会いたい。 next→ ←back 魔界top |