堕天 4




貴方は何も変わらないまま、そこに立っておられた。

あの時。

貴方が闇を選ばれ、私を鳥篭から放たれた、あの時。


貴方の腕を離そうとしない私に哀しげに微笑んで

「お前はお前の天にお帰り。ウリエル」

そんな残酷なことを私に命じられた、あの時のままの笑顔で。




――― 憎かった。

私のためだと笑って、平然とご自分の腕を切ってしまわれた貴方が。

貴方の傍で貴方の為に戦える幸せな悪魔達が。



何よりも。

堕ちても貴方の傍に居たいのだと言えなかった、あの時の自分が。



貴方の腕を持ち帰った私は、貴方の思惑通りに、英雄として天に迎え入れられた。

以前に貴方の籠から解き放たれた、ミカエルやガブリエル、ラファエルのどこか痛ましい視線を
受けながら、私は憎しみのままに悪魔軍と戦い、そしてこの地位に据えられた。



貴方を思わない日は無かった。

天国という名の地獄に、私をつき落とした貴方を。



そうして降り積もる憎しみは凝り固まり、やがてたった一つの望みになった。


――― 会いたい。


敵としてでもいい。
悪魔軍を追い詰めれば、きっと貴方に会える。


もう一度、貴方に、会いたい。


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