枷で四肢の自由を奪われ、目隠しで視力を奪われた天使を、その獣はゆっくりと暴いていく。
――― 優しすぎるほどに、残酷な触れ方で。
始めは触れ合わせるだけだった唇がふわりと動き、ちろりと舌先でウリエルの唇を舐める。
促されるように口が少し開くと、そのままとろりと舌を入れられて、逃げることも思いつかない
天使の舌は甘く絡め取られた。
舌を絡められる度に、すいと肌を撫でられる度に、得体の知れない何かがウリエルの全身を走る。
(・・・違う。これは、幻覚などでは、無い)
目隠しをしていても、いや目が見えないからこそ、ウリエルはこのティアマットと名乗る闇の獣が
自分の大切な主であることを疑わなかった。
「抵抗、しないの?」
(抵抗?)
くす。
「もう動けない?キレイな天使様。でも、このままだと」
キスだけで済まなくなるよ、いいの?
そう耳元で囁かれただけで、既に身体が震えるほど敏感になっているウリエルを見て。
闇の獣は、もう、手遅れかな、と困ったように呟いた。
「満月になると、時々、俺は狂う、らしい」
世間話のように軽い口調で、闇の獣は天使に囁きかける。
(らしい?)
「俺が覚えていないからね、らしい、としか言えない」
(覚えて、いない?)
「ああ、記憶どころか、最初は自我すら無かった。で、それに気づいた馬鹿が俺を弄んだ、らしい」
(弄ぶ)
「ああ、こんな、ふうにね」
「う、あ、あぁっ。・・・ああぁぁあぁあああっ!」
唐突に、未だ触れられていなかった部分を愛撫され、天使は耐え切れずに声をあげる。
「ふふ。やっと声を聞かせてくれた」
「あ、あぁぁ」
衝撃に声を堪えようとする様に、満足そうな音でその怪物は言葉をかける。
「気持ちいいだろ?満月の夜、俺の体液は、相手を狂わせる、らしい」
「あ、狂わせ・・・る?」
「だから、皆、狂った。狂って獣になった」
「そ、れが、闇の獣の、子」
「そう、らしい、よ」
――― だから、怪物の母だって言っただろ。
そう言って、また唇を深く重ね合わせ、舌を交わらせ、唾液を注ぎ込む。
じわりじわりと体内に何かが浸み込んでいくような、おぞましい快楽にウリエルの身体がビクンと
動き、翼がバサと羽毛の雪を降らす。
(これは。犯されて…いる?いや、侵されて…)
――― 侵、食。
その単語を脳裏に浮かべながら、またウリエルは黒と白の雪を降らせた。