ティアマット 3



枷で四肢の自由を奪われ、目隠しで視力を奪われた天使を、その獣はゆっくりと暴いていく。
――― 優しすぎるほどに、残酷な触れ方で。

始めは触れ合わせるだけだった唇がふわりと動き、ちろりと舌先でウリエルの唇を舐める。
促されるように口が少し開くと、そのままとろりと舌を入れられて、逃げることも思いつかない
天使の舌は甘く絡め取られた。

舌を絡められる度に、すいと肌を撫でられる度に、得体の知れない何かがウリエルの全身を走る。

(・・・違う。これは、幻覚などでは、無い)

目隠しをしていても、いや目が見えないからこそ、ウリエルはこのティアマットと名乗る闇の獣が
自分の大切な主であることを疑わなかった。

「抵抗、しないの?」
(抵抗?)

くす。
「もう動けない?キレイな天使様。でも、このままだと」
キスだけで済まなくなるよ、いいの?

そう耳元で囁かれただけで、既に身体が震えるほど敏感になっているウリエルを見て。
闇の獣は、もう、手遅れかな、と困ったように呟いた。



◇◆◇


「満月になると、時々、俺は狂う、らしい」
世間話のように軽い口調で、闇の獣は天使に囁きかける。

(らしい?)

「俺が覚えていないからね、らしい、としか言えない」
(覚えて、いない?)

「ああ、記憶どころか、最初は自我すら無かった。で、それに気づいた馬鹿が俺を弄んだ、らしい」
(弄ぶ)

「ああ、こんな、ふうにね」
「う、あ、あぁっ。・・・ああぁぁあぁあああっ!」

唐突に、未だ触れられていなかった部分を愛撫され、天使は耐え切れずに声をあげる。

「ふふ。やっと声を聞かせてくれた」
「あ、あぁぁ」
衝撃に声を堪えようとする様に、満足そうな音でその怪物は言葉をかける。

「気持ちいいだろ?満月の夜、俺の体液は、相手を狂わせる、らしい」
「あ、狂わせ・・・る?」
「だから、皆、狂った。狂って獣になった」
「そ、れが、闇の獣の、子」
「そう、らしい、よ」

――― だから、怪物の母(ティアマット)だって言っただろ。

そう言って、また唇を深く重ね合わせ、舌を交わらせ、唾液を注ぎ込む。
じわりじわりと体内に何かが浸み込んでいくような、おぞましい快楽にウリエルの身体がビクンと
動き、翼がバサと羽毛の雪を降らす。

(これは。犯されて…いる?いや、侵されて…)

――― 侵、食。

その単語を脳裏に浮かべながら、またウリエルは黒と白の雪を降らせた。



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この話の間、後書きは基本反転です。

ティアマットの意味は3つぐらい掛けてます。海の化け物と怪物の母と、もう、一つ。