「どう、思う。クー・フーリン」
「どう、とは」
万が一に備えて、控えているロキとクー・フーリンが言葉を交わす。
「耐えられると、思うか?」
「・・・少なくとも、"獣の子"にはならないでしょう」
あの下種共が、と憎憎しげにクー・フーリンは言い捨てる。
「例の事件後、検証役になった俺もお前も、何ともなかったからなぁ」
「何とも、とは語弊がありますが」
「・・・ああ、"事後"に能力値が異常に上がったか。おかげで、お前も俺も並み居る魔将軍を差し
置いて、シュラ側近になれたわけだ。後、戦闘時の見た目も少し変わったな」
――― 要は、と、白い幻魔が言う。
「要は、その者が主様にどのような想いを持っているかが実体化されるだけのこと」
少しでも邪念や偽り、侮りの心があれば、それはそのまま反映される。
意識の無いシュラを弄んだ者共など、その醜い心そのままに報いを受けた。
「しかし、あなたが『そのまま』だったのは、意外でしたが」
とチラリとクー・フーリンはロキを見る。
「心外な。と言いたいが、オレ自身も意外だった」
それだけシュラに心底、入れ込んでるって証拠を突きつけられたようなもんだ。逆に照れたぜ、と
魔王は笑う。
「ただ、なあ。オレやお前と違って、ウリエルは、まあ、その何だ」
あっちの経験値低いだろうなぁ、キツいだろうなぁ、と呟くロキにクー・フーリンは眉を寄せる。
「だから、どうして私まであなたと同列に」
「よく言うぜ、ケルト魔界一のプレイボーイが。何人の女を泣かせたか数えられるか?」
「・・・昔のことです」
「否定はしないわけだ」
「しつこいですよ。刺されたいのですか?」
「・・・遠慮しておくぜ」
◇◆◇
「・・・大丈夫、ですよ」
しばらく黙り込んだ後に、クー・フーリンが呟く。
「そうだな」
「彼は、ずっとずっと、焦がれていたでしょうから」
「だな」
それに、シュラは狂ってても「優しい」からな〜。
なあ、未だにあの夜のことを思い出すと眠れなくならないか?
ああ、オレん時の検証は男性体だったけど、女性体のシュラを抱けるなら、いつ獣になっても、
構わないぞ。オレは。
涎を垂らさん勢いで語るロキを半ば呆れて見ながら、クー・フーリンもそのときのことを思い出し、
頬を緩める。
「ただ、優しすぎるのも困りものでしたけどね」
「あ、お前もやられたか、途中で」
「辛いなら、やめておこう、と」
「あ〜、あれはキツかった。あれだけ夢中にさせておいて!
わざとか!わざと焦らしてるんじゃないのか、このやろう!とか思ったぞ」
「続けていただくのに、苦労しましたね」
「・・・今頃、苦労してるだろうな」
「でしょうね」
でも、それぐらいの苦労はしていただかないと許しませんけどね。
私の主様をこれだけ独り占めしているのですから、と呟くクー・フーリンの突き刺さるような殺気を
感じながら、北欧出身の魔王はそろそろこの幻魔をからかうのはやめておこうと肝に銘じた。