「あ、ん・・・っ」
ゆるりゆるりと、足先から上って行く天使の指と舌の動きに。
悩ましげに眉を寄せ、息を吐いた悪魔は、すい、と脱力し、ぱさと上半身を寝台へと横たわらせる。
その動きに気付いた天使は慌てて、既に膝の上まで進めていた舌を離して、主へと覆いかぶさり。
腕をたどり、肩に触れ、首筋を撫で上げて。
しなやかな髪の中に隠れている黒い突起を手探りで確かめる。
良かった。傷つかれてはいない、と安堵する天使の首に。
ふわりと甘い腕の拘束が回される。
くすくす。
引っかかった。と稚い声で、主が笑う。
愛してくれるのはいいけど、お前の顔が見えないと、寂しい。
ああ、目隠しは仕方ないけど。狂うのを防がないとね。少しでも。
そして。
ね、大天使。
キスして。と、甘い声で、悪魔が誘うから。
ああ、もう、死んでも、いいと。
掴んだままの突起をやわらかく、指先でそっと愛撫しながら。
その声が導く先に、下僕は唇を落とした。
◇◆◇
「シュラ、さま」
――― 飢えていたのだ。
砂漠で迷った旅人が、やっと水を得たように。
一時も口を離すこともできぬまま。
甘い肢体に口づけの雨を降らせながら、天使は思う。
その飢えを乾かした後、報いとして死が待っているのだとしても。
今はただ、この渇きを癒すことしか、もう、何も。
・・・初めて貴方がこの容をとられたとき、その場に居たのはロキと私だった。
私たちがその美しさに息を呑んでいることも知らず、貴方は不思議そうに自らの体を眺めていた。
その後、貴方に抱きついたまま離れないロキを引き剥がすのに、どれだけ苦労したことか。
くすりと笑うと。
チリ、と柔らかい痛みを感じ。
「誰のこと、考えてるの?」
拗ねたような、甘い声。
その音を紡ぐ唇がつけた甘い痛みの痕をぺろりと舐めながら詰まる、
愛しい愛しい肢体を深く抱きしめて。
「貴方のことを」と愚かな下僕は答えた。
◇◆◇
もったいない、と思う。
目隠しで、あの綺麗な瞳が見えない。
青い空を円く切り取ったような、あの。
思い出せないけど、誰かと、一緒に見た、青い、綺麗な、空の色。誰とどこで見たのだったか。
その色、好きなのに。
「・・・っ」
苦しみを耐えるような声がする。
「ウリエル?」
「貴方様こそ」
誰のことを、お考えに?
塞がれていても、その布の向こうに澱む青を見る気がして。
「お前のことだよ」と、優しい主は答えた。