「月が傾いてきたね」
ふわりと天使をその腕に抱きこみながら、悪魔は言う。
「では」
「うん。もう少しで刻限」
ホントの俺が目を覚ますから、行かないと。
「・・・はい」
痛みを耐えるように目を閉じ、俯いた下僕を主は戸惑うように見る。
「ね、ウリエル」
「はい」
「何か、望みは無い?」
「望み?」
「うん。俺は何も残せないけど、お前が何かを残したいなら」
今だけしか、叶えてあげられないけど、ね。ホントの俺って、潔癖?みたいだし。
・・・ホントの俺が、お前の、恋人になってやれれば、いいんだろうけど。
そう微笑むシュラが愛しくて哀しくてウリエルはもはや零せぬ涙を零しそうになる。
つまり、この逢瀬はもう二度とないのだ。
こうして触れられることも、愛されることも、もう二度と。
――― 最初で、最後。
暫しの後、ぽつりと天使は、愚かな自分を戒めるであろう言葉を落とす。
「では、一つだけ」
「何?」
「愛している、と」
そして。
――― あの月が欠けるまで。
舌を絡め、脚を絡め、これ以上深くなれぬほど深く交わって、これ以上なれぬほど一つになって、
身体の奥まで、細胞の一つ一つまで貴方で侵されつくされて。
「アイシテルよ。ウリエル」
その言葉で、本当に、私の身体も心も魂も、何もかもが、全て貴方に絡めとられた。