「ど、どうだ?」
「い、いつも、この時ばかりは、いやだなぁ」
朝になり、おそるおそるウリエルの様子を見に来た衛兵どもは
「時間ですか?」
と問いかける穏やかな声に
「ひ、ひぃいっ」
と恐怖の叫び声を上げた。
その少し前にウリエルが目覚めたとき、鎖も枷もそのまま、衣服も連れてこられたときと全く変わらない
状態の自分に驚いた。見た目で異なるのは、目隠しが無いことのみ。
(あれは、全て夢?・・・いや)
身の内に息づく凄まじい力に気づき、柔らかく笑む。
・・・確か、気を失う前に、主がそっと囁いたのだ。
「もうこれで、お前が俺直属、どころか側近になっても文句つけられるやつは居ないよ」
「し、しかし、私の能力、では」
側近までは他の魔将軍が許しはしないはず、と戸惑うウリエルに。
くす、と笑って、
「多分、オールMAXになってるはずだよ」
「え?」
「目が覚めたら、分かるよ。俺の堕天使サマ」
そう言って、もうおやすみと優しくキスをされて、眠りの底に落とされたのだ。
やがて、びくびくと恐れながら、衛兵達はウリエルを裁定の場に引き連れて行った。
(な!まったく変わっていないぞ)
(ロキとクー・フーリン以来か)
(い、いや、まだ分からん)
(そうだ。裁定の儀までは、まだ)
(意志で変化を押さえ込んでいるヤツも居たからな)
ざわざわと騒ぐ高位悪魔達が取り囲む裁定の場の中央に引き立てられたウリエルは、正面の一番高い
ところに、ルイの傍らに控えるシュラが居るのに気づき、嬉しげに微笑んだ。
(今日のシュラ様は女性体か。いつ見ても、お綺麗だよなぁ)
(惜しいよなぁ。"コレ"さえなければ、満月の度にヒィヒィ言わせてさしあげるのに)
(はは。そのときは必ず呼べよ。二人がかりならもっと楽しいぞ)
不埒なことを囁きあう無能な悪魔貴族達に、シュラの後に控えるクー・フーリン達が殺気立つ。
が。
「リン」
「は、はい、主様」
「放っておくといい。他者に聞かれていることすら気づかない阿呆どもなど」
「は」
瞬時にシュラに見抜かれ、窘められるとリンはその場に跪いた。
各自が場に落ち着き、ルイが片手を挙げると、ざわめいていた場は水を打ったように静まり返る。
「では、これより裁定の儀を始める」
――― シュラ、出番だよ
「・・・はい。ルシファー様」
ルイの声に、神降ろしを行ったかのように忘我の状態となったシュラが立ち上がる。
瞳は赤く輝き、身体から放たれるオーラは燃えるように光り。
その姿をうっとりと、でもどこか悲しげに見る大天使を虚ろな視線で見据え、言の葉を紡ぐ。
「汝、我が精を受けし者、大天使ウリエル」
「――― はい」
主の視線を真正面から受け止めながら、ウリエルがその場に跪く。
「我が命を受け、真実の姿を現せ!」
その言葉を受けた瞬間、白と黒の翼を持つ天使は黒く輝く光に包まれた。