その肌に、初めて深く触れたあの日に、交わした、言葉を思い返しながら。
クー・フーリンは同じ音のそれを、落とした。
本当によろしいの、ですか、と。
もっとたくさんの「白」を注げと命を下して、女性体に変じた己の主に。
「・・・う・・・んっ、・・・あ、・・・ど、して?」
いつもと、ちが、う、と、甘く啼き、怪訝そうに戸惑うシュラに、忠実な犬はふ、と微笑む。
――― ご存知ありませんでしたか。主。
「何、を?」
「本来の私は、」
すべての手足に、七本ずつの指を有して、いることを。
――― え?・・・なな、ほん?
(そういえば、これまで貴方にその形態を使ったことは、無かったですね)
「ふ、ぁ・・・ぅ、ん、っ」
その指の動きに、普段以上に翻弄されながら、主は上から覆いかぶさっている彼の髪を、梳く。
甘い主の表情を周りから覆い隠すカーテンの如き幻魔の長い髪も、常とは異なる柄を描く。
「髪の、色、が、」
「ああ、これは」
本来は三色なのだと。
そう微笑んで語るクー・フーリンの、愛しげに細められた目の内には、7つずつの、瞳。
先ほど、いや、今も惑乱させられている7本ずつの指を、知覚しながら。
混沌の王は理解をする。
己に従い、己を抱き、己に溺れている、この幻魔は。
まさしく、異国の主神の愛し子であるのだと。