Metamorphose 02




(シ、シュラ、様が、無理やりに、み、見合い、い、いや、ら、らんこうパーティ?
・・・見合い、は大体、分かるけど、らんこう、って、・・・な、何だろう?)

コテと頭を傾げてみるものの、何となくジルには聞かない方がいいように思えるクズノハである。

(・・・でも、よく、分からないけど、きっと、綺麗な女の人がいっぱい、居て。
その人達が、シュラ様と、仲良く、するんだ。
いつも、僕にしてくれるような、とっても気持ちのいい”撫で撫で”も、優しいモフモフも。
寝ぼけたときしかしてくださらない、甘い、キスも、きっと、その人達と・・・)

震えながら、器用にその白い顔を、赤くしたり、青くしたり。
果ては白い尻尾を、幼い憎しみでズズズと黒く染め出したクズノハを見ながら、
ちょっとは感情のコントロールも教えてあげないとねーと。またジルは深い溜息を、つく。

(大体、こんなにこの子と仲良くなる予定じゃなかったのに)

――― そもそもは。
クズノハに同種族の友達が必要だな、と、いらぬ気を回したシュラの要望を受けた形で。
狐種族の代表として、もっとも若く、また妖力も強いジルが選出されたのだ。

・・・表向きは。

(ホントは、この子をうまく追い出して、後釜に座れ、って、言われてたのよねぇ)

シュラ様が狐形態をそれほどお好みだったとは、何たる僥倖!と、一族のトップ連中は大喜びで。どこの「狐の骨」か分からない妖狐の子など、とっとと排除してしまえ、とか。

(かく言う私も、最初はそのつもりだったんだけどなぁ)

だって、私だってシュラ様の大ファンだし。ある日突然迷い込んできた狐の子が、あの方の寵愛を
一身に受けているなんて許せない!って、思ってた、はず、なのに。

(何でかなぁ。そりゃ、綺麗だし、可愛いし、それに)
・・・信じられないぐらいに、強いし。

初めて会ったときは心底驚いた。
一族の長の血脈とはいえ、一番若い私ですらこの子の10倍の年を生きてて。
それでやっと尾が6本だって、のに。

(数年しか生きていない、それこそ普通の狐と変わらないはずの生き物が)
もう5本も尾を持つなんて。

その件の尻尾を、既に、2本も黒く染めたクズノハを見て、あーあ、とジルは呟く。

・・・ああ、あと。それに。
多分だけど。
シュラ様が。

「ああ、お前が、そうなんだ。クズノハのこと、よろしくな」
そう言って、笑ったシュラ様が、とても。
とても大切な宝物のように、この子を大事に抱き上げて、優しく撫でてやっているのを、見て。

ああ、きっと、私なんかじゃ、かなわない。って。

――― そう、思ったから、かしらね。

回想を終了して、ジルは目の前でまだ悶々と悩み続けながら黒く染まっていく子狐に問いかけた。

「ねえ、クズノハ」
アンタも、そのパーティ、出てみない?

「・・・へ?」




◇◆◇




え?だ、だって、僕、女性体に変化したことなんて。
ナニ言ってんの!そもそもオスでも、女性体に変わるほうが普通なのよ!狐ってのは!

・・・そ、それは、そう、だけど。
男性体に変化するほうが難しいんだから!今のアンタなら女性体なんて余裕余裕!

そう、かな。・・・で、でも。
でもも、へったくれも無い!ほら、年が足りない分は薬準備しておくから!!

薬?な、何の。
年齢を上げる薬よ。じゃないと、今のアンタなら良くても10歳ぐらいでしょうが!

何が?
〜〜変化した後の姿よ!せめて17,8歳ぐらいに見えないと。

・・・見えないと?
お相手に選んでもらえないでしょ?仮にシュラ様がロリ属性でも目的は子作りなんだから!

お、お相手って、ロ、・・・リ属性って、子作りって、ぼ、僕はそんな。
あーもー御託はいいから!・・・じゃあ、他の女にシュラ様、食われてもいいの?!

・・・くわ、れる?
文字通り、食われる、でしょうが、この場合!

・・・いや、だ。
でしょ!納得したら、さっさと化ける練習よ!!当日は、私の服、貸してあげるから〜!!!

・・・。
何がいいかなー。フリルいっぱいのより、シンプルな方がいいっぽいよねー。

・・・。
つか、アンタ、シュラ様の好み知らない?可愛い系と美人系、どっちがお好み?

・・・。
シュラ様出身地の和風もいいけど、チャイナも狐美人っぽくていいわよねぇ。

・・・。
ほら、長いスリットから覗く白い脚の肌って、チラリズムで需要高そうじゃない?

・・・ジル。
髪の毛はアップかなぁ。後れ毛は永遠の萌えよね。でも、風になびくロングもやっぱり。

・・・ジル。
なーにー?クズノハー?

・・・アナタ、楽しんでないですか?




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