Metamorphose 14





ふ。さすがにザフィエル。汚い手を使う。

本来はお前こそが、より私達に近い位置にある天使であるものを。

その属性を裏切ってまで天に執着するのは。

(やはり、その趣味の偏りにあるのだろうねぇ)

…さあ。シュラ、どうする?

先ほどの「ぶちぎれた」力など、まだ序の口だ。今のお前の力はその程度では納まらない。

お前の本来の力を出せば、このような檻など壊すのは容易い。

けれど、まだその力を天界の者に露わにするわけには、いくまい。

特にそのザフィエルは曲者だ。けして、お前のデータを渡すわけにはいかない。

それが分かっているから、ザフィエルが顕現してから極力動かないのだろう?

ふふ。本当に賢い子だ。哀しいほどに、賢い、哀れな、愛しい子だ。




◇◆◇




女性体の己を極力視界に入れないように動く密偵を見ながら、クスとルイが妖艶に笑う。

「も、う。いい、シュラ。お前が、弱、る」
「まだ大丈夫だよ、ロキ」

光の檻の中で、弱っていくロキに人工呼吸のように己の気を与える主を見ながら、 ウリエルがその剣を構えなおす。空高くより反動をつけて打ちかかり、その檻を壊そうとするが。

「く、」
「無駄ですよ。ウリエル殿」

堕ちた貴方ではこの檻を壊すのは、無理です。そして私を狙ってもまた、無駄。
私を殺せば、この檻は自動的に崩れるようにしてあります。

「中のモノ全てを、諸共に、ね」

ふふ。はは、は、と笑い始めるザフィエルは天の使い、というよりはむしろ。
((やはりマッドサイエンティストの本性はそのままか))と。
ウリエルの眉を潜めさせ、ルシファーの口角を上げさせる。

「さあ。人修羅殿!気付いておられるのでしょう!この檻は転送機能も付加してある!!」

――― 共に天へと戻り。我等が父の元で、正しき転生の道を辿られよ!Séraphitus!

その言葉が合図だったように、光の檻の格子はその密を上げ。
闇の帳を受けて、花弁を閉じる内気な花のようにゆっくりと萎み始めた。




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