嫌だ。 こんな気持ちは、嫌だ。 黒くてどろどろとして体中に粘りつく、嫌な感情は。 嫌だ。 忘れても、忘れても、忘れられない。 振り払っても、振り払っても、消えない。 甘い音。優しい声。歓喜の羽ばたき。 次の日、あの方の枕元に落ちていた一片の白い、羽。 その存在を誇示する、ような。 (ここは、僕とシュラさまのお部屋なのに) きっと。 罰が当たったんだ。 約束を破ったから。 罰が。 でも。 寂しくて。 いつも、一緒に居たのに。 夜中に目が覚めて。寂しくてたまらなくなって。うっかりと。 シュラ様の寝室に。 行かなければ、よかった。 ピクシー様にあれほどに、止められたのに。 行かなければ、聞かなければ、見なければ、知らなければ、よかったのに。 嫌だ。 黒い気持ちが叫ぶ。 裏切り者、と叫ぶ。 誰が、何が。何を。裏切ったと。 分からない。そもそも。そんなことを己に言える資格など、どこにも。 ああ、でも、ずっと、叫んでる。 心が、叫んでる。 ――― 裏切り者! 愚かな。 今さらだ。 あの方が、恋人を持っておられることなど、皆、知ってる。 むしろ他の方に比べれば、少ないほうなのも、分かってる。 でも。 恋人なんかじゃない。Deadman、分銅だとロキ様は苦い声でおっしゃっておられたけれど でも、それでも。その間だけでも、一番あの方の傍に居られる。 “その間”、だけでも。そこに。 (そこは、僕の場所なのに) それに。 「心より、愛しております。……シュラ、様」 「ああ。俺も………アイシテルよ、ウリエル」 嫌だ!! ああ。裏切り者!! (それは、僕の!僕だけの言の葉なのに!!) 「そこまで!」 next→ ←back 魔界top |