――― 私 の 心 は 悲 し い 時 間 。 音 も 無 く 、 時 を 刻 む 。 チ ク タ ク と 。
「…っ」
その詩が、似合いすぎて。
この美しい男に、似合いすぎて悲しくて、俺は息を詰まらせる。
「どう、したのだい?」
「何でも、ない」
そう?と、微笑むコイツの笑顔が綺麗すぎて、俺の頬が勝手に赤くなる。
くそ。調子狂う。
ああ。くそ。あんなこと、言うんじゃなかった。
(なあ。俺じゃ、そいつの代わりになれない?)
くそ。あれは演技じゃなかった。勝手に出た。勝手に喉から口から転がり出やがった。
コイツがあんまり苦しそうだから。あんまり悲しそうだから。だから。慰めて?やりたくて?
でも。結局、コイツは一瞬とても痛そうな顔をして、すぐに、笑って、ありがとう、と礼を。
……礼なんか、いらない。いらないから、そんな悲しい顔をするなよ。
どうして。ソイツはコイツのところに戻ってきてやらねぇんだよ。
コイツはこんなに、ソイツのこと、待ってるのに。
――― ああ。そっか。ソイツ死んでるんだから、しかたねぇか。だったら。
どうして。コイツはソイツを忘れられねぇんだよ。もう帰ってこないのに。
オレは、こんなに、コイツのこと、想っ………え?
……こんなに? 何だ?
「続き、聞くかい?」
「え」
「詩の、続き」
ああ、と心の動揺を抑えて、肯きながら。
俺の冷静な方の思考回路は、この後の“予定”をグルリグルリと何度も反芻した。