「困りますね。私の大切な“彼”にそんな汚い指で触られては」
「き、貴様は」
怯えきった飼い主が吠える先には、黒衣をまとった白磁の肌。この帝都の美しき守護者。
「ひ。……な。何をする、お前ら」
「はなせ、はなさんか!」
さっきまで怯えた悲鳴をあげていたはずの少年たちが、いつのまにか拘束を解かれて。
奇妙な笑顔を浮かべて、豚とその手下どもに絡み付いている。
「教えてくれないか、君たち。君たちをどうしたいって思ってた?その下種は」
ライドウの質問に、先を争うようにソイツらは嬉しそうに報告を始める。
「全身に針を刺してやりたいって」
「爪をゆっくり一枚ずつ剥いでやりたいって」
「体中の○に××を○れてやりたいって」
「○○を△△して、××してやりたいって」
(読心術、か。こんなことまでできたんだ。じゃあ、今までの俺は。俺の心も全部)
混乱し、動揺する俺など知らぬ気に、ライドウは少し困ったように笑う。
「へえ。そうなんだ。……本当に、困った人間、だね」
じゃあ、まず自分でやってどれだけ痛くて苦しいか、味わってもらおうか?
「「「「「そうだね」」」」」
そう異口同音に主に同意する少年たちは、既にヒトのカタチをしていない。
「「「「「きっと痛いよ。とっても苦しいよ。ああ、可哀想にねえ」」」」」
さっき自分が言った言葉をそのまま返されたことに気付いているのか、いないのか。
既に悪魔のカタチに戻った少年たちに拘束された俺の飼い主が、焦った声でわめき出す。
「な、なな、何をする気だ、貴様」
「貴方がしようとしていたことを」
「な。だ、大体、き、貴様。い、一体どこから」
「玄関からですよ」
「バカな。あれほどたくさんの見張りを……」
「ものの数分とかからずに、通してくださいましたが?」
ニコリ、と爽やかに笑むコイツこそが、本当の悪魔なんじゃないのか?
「く…。だ、だが。なぜだ。このアジトが分かるはずも」
「ええ。二重三重に結界を施していましたからね。さすがに今まで私も場所が分からずに」
「それが、どうして!?」
クスリ、と笑い、こつりこつりとその神は豚に近づく。
来るな、近づくなと震えて叫ぶその脇をすりぬけて、ライドウが愛しげに触れるのは。
――― 絵の中の少年。
「“彼”が教えてくれたのですよ」
だから、私は“私のモノ”を取り返しに来ただけ、なのです。
「ご理解いただけましたか?」
我が帝都に巣くう、招かれざる御客人。