KO 02



どこかの、街を、僕は歩いている。
道も建物も、何もかもが崩壊した、不思議な街。
閉じた空には太陽のようで、太陽でない。紛い物の光源。

――― ああ、またいつもの夢だ。

サク、と、音を立てて、砂漠のような不毛の大地を僕は歩む。……あても無く。

――― この夢は、嫌だ。
何もかもが壊れ、乾ききった、その風景が。今の自分自身を見ているようで。

やがて、いつものように、僕は歩みを止める。
目の前にはKOの二文字。と、簡易な柵。その向こうには、どこかで見たような、街。

KO。Keep Out 立ち入り禁止……か。
いつも、この場所に来ると。僕はその看板を見る。
そして、諦めるのだ。先へ進むことを。

夢ですら、僕は、変わらない。変われない。
弱くて、臆病で、そのくせ、プライドだけは高くて、人に弱味を見せたくなくて、突っ張って。

立ち止まったまま、横で揺れるhazard area(危険区域)の看板をぼんやりと、眺めていると。
数十メートル先に、人が、居ることに、気付く。

人影?
これまで、一度も、誰とも、この夢の中で会ったことなど、無かった、のに。

影のようにゆっくりと街へと入っていく、あの、少年は……。

――― まさか!

その後姿に見覚えのあった僕は、慌てて柵をつかみ、足をかけ。

生まれて初めて、そのKOを乗り越えて、hazard area へと、進入、した。




◇◆◇



入った街の入り口には、どこかで見たような犬の銅像の横に、星型の……銅像?
……真ん中に眼がある?何だ?これは?

「ああ、それね。何度言っても、フォルネウスを待つのを止めないから」
突然にかけられた声に驚いて、振り向くと……人、じゃない?影?のような希薄な、何か。

「仕方なく、あの方が代わりにそれを作ってやったんだよ。もう待たなくていいように」
あの方、って、誰のことだ?首をひねる僕に、その希薄な物体は話し続ける。

「そうか、あんたが居なくなってからのことだったね。しかし、あんたも久しぶりだねぇ」
……僕が、居なくなって、から?……久しぶり?

「あんたも待ち続けているのかい?気の毒に。あんたこそ銅像を作ってもらったらどうだね?」
……そういえば、夢だったな。夢に整合性を求めていた僕が馬鹿だった。

思いつつも、先ほど見かけた人物について、所在を知らないか、聞いてみる。

「ああ、あの方なら、どっちかの階段を下っていったと思うよ」

見ると、地下街に下りる階段が、2つ。
周囲を見回しても、ほかに聞けるようなモノは……居ないか。

仕方なく、奥のほうにある階段を選んで、下る、が。
……暗い。

地下街ではなく、ただの通路か?
歩みを進めると、響いてくるのは、少し昔に流行ったような、リズム。
響きの元をたどり、暗い廊下の先にある、重いドアを開くと。

……やはり、ディスコ、か。我ながら想像力が貧困だ。
見回しても、彼らしき人は居ない。希薄なモノは、DJの他にも、数体見えるが。

無駄足か、と再びドアに戻ろうとする僕に、かけられる、女の声。

「ねえ、綺麗なおにいさん、アタシといいことして、遊ばない?」

……やはり、想像力が貧困だ。
プロアマ問わず、常日頃かけられ続けて聞き飽きた言葉を、無視したまま進めた僕の足は。
「遊んでくれたら、おにいさんの知りたい人のこと、教えてあげるよ」

その言葉に、縛られたように止まった。





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つつくと、「遅いぞ、フォルネウス……」と音が鳴って、くるりんぱ、してくれる銅像です。