KO 03



ゆらり、と揺れる何かの光に、僕は眼を覚ます。
視界に入るのは、怪しげな部屋。何かを隠蔽するような垂れ幕。ロウソクの、炎。
床には、これは……魔方陣、か?オカルトか何かの漫画で見たことがある、ような。

――― 夢から覚めても、夢、か。面白い経験だ。
苦笑する僕が居るのは、魔方陣の中。贄にでもする気か。あのネコマタ。

ディスコで僕を呼び止めた声の持ち主は、女性の容にどこか似た、猫型の化け物。
彼女(と言っていいのだろうか)の言うところの、いいこと、とは戦闘、だった。

夢と分かっているせいか、思いのほか、焦りもしない自分に驚きながら。
けれど、相手を滅する手段を何も持たぬ、”今の自分”にどこか苛立ちを感じながら。
それでも互角に戦っている最中に、背後から別の何者かが、僕の後頭部を。

……思い出すだけで、頭が痛む気がする。夢なのに、リアルなことだ。

やがて、ロウソクがゆらゆらと、揺れ。怪しげな室内に何者かの、気配。

「きょーこそは」
「きょーこそは」
「ごりっぱな悪魔様を召喚してもらいますよー」
「ますよー」

「こーんな」
「こーんな」
「りっぱな」
「りっぱな」
「生贄まで、あるんですから、余裕のよっちゃんですー」
「ですー」

……どこかで聞いたような、不自然に重なる話し方。無駄に伸びる語尾。
そっと、うかがってみると、白い着物のような不可思議な衣装をまとった人らしきモノが二人。

「フフフ。貴方がたもすっかり、この道にのめりこみましたねぇ。……憎しみは人を、いや、」
マネカタを、変える……と。そう、彼らの前で、ほくそ笑むのは……。
……想像力貧困にもほどがある。何だ、あの黒山羊サンは。
サバトという言葉から真っ先に想像できる形態の化物を視界に入れて、僕は内心でため息をつく。

「いいでしょう。月も満ちた。そして、この月より美しい生贄が揃った今こそ」
嬉しくもない美辞麗句を重ねた後に続く、ありがちな呪文詠唱。
例によって、ありがちな魔王が降臨するのか、と思っていた僕の前に轟音と共に現れたのは。

己の想像力を完膚なきまでにDELETEして、再インストールしたくなるような、代物だった。





◇◆◇



「ぐわっははははっ!ここで会ったが79年目だな!!!」
……それを言うなら、百年目だろう。
その微妙な年数は何なのだ、と、どこか他人事のように思いながら、僕はソレを見る。

緑と形容していいか分からない、濁ったその色を纏う、その巨大な……。
フロイトだったかユングだったか。一度、夢判断のサイトでもググッておこうと
頭のどこかで考えながら、このような形態を夢に見る自分への嫌悪感で鳥肌が立つ。


「ほほう。どうやら、転生したか、でびるさまなあ!管も武器も持たぬとは!!」
何やら妙な呼び方をされた気もするが、そんなことよりも。
これは都合がいい、と、大声で嗤う、その”魔”から、無数の触手のようなモノが這い出て、くる。

ウニョリ、と蠢くその動きに、生理的な嫌悪感を覚え、反射的に逃げようとして。
己が縛られたままであったことに、今更ながら気付く。

「怯えることはないぞぉ。肉を喰らうのは精を吸い取ってからのことだからなぁ!」

ぬちょり、とミミズのような触感の、それらが、手に触れ、足に触れ。
ぞわり、ぞわりと服の中に入り込み、体中をまさぐられる感触に全身が、おぞ気立つ。

「昔は効かなかったが、今のお前ならこの”たたり生唾”。さぞや美味しく飲んでくれるだろう!」
意味不明な言葉を投げながら、首と額を、ぐるりと触手に巻きつかれ、固定される。
そのまま、別の触手に顎を圧迫されて、無理やりに口を。

……何という、悪趣味、な。
抵抗もできぬまま、数本入り込んだ細いソレは舌を弄び、歯列を嬲って、何かを煽って、くる。
だけで、なく。開かされたままの口から、己の唾液で無い液体がつたってくる、のに気付く。

白くて、どこか甘くて、生臭い、ような。
「やはり耐性は持っているかぁ。だが、時間の問題だなぁ」

何のことか、と思う暇も無く、ドクリと己の感覚が、己の理性を裏切り始めるのを、知る。
……気持ち、いい、だと。このような異形に、このような形で、無理やりに、触れられ、て。

「効いてきた、ようだなぁ」
さっきの、白い液が、催淫効果が、ある、のか。鈍る思考で、そう、臍をかむ。

「心配するなぁ。最後は気持ちよく俺のギンギンの突きで、昇天させてやるぞぉ!」
とりあえずは、こちらからもっと気持ちよくさせてやろう。

言いながら、口内へと入り込もうとする、さっきよりも太い触手の先は、例によって、その形状か。
この太さでさっきの液体を注がれれば、と。快楽を求めようとする思考を、違う意識が阻む。

(嫌、だ。……せっかく、会えたのに。やっと、会えた、のに。
もう、“彼”以外に、穢されるのは、侵されるのは、嫌だ。それぐらいなら……いっそ)

そう、思ったから、だろうか。
それ以上の侵食を拒み、舌を噛もうとした僕の耳に入ったのは。とても焦った、


「やめろ!マーラ!!」

“彼”の声だった。





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後書き反転。

新年なので、もうひたすらにヌルく。
ホントは、スライムマーラ様が服をじゅるじゅる溶かす永遠の定番ネタもやりたかったのですが。
ほんでもって、にゅるにゅるは、ライドウさんの違うところにも入り込む予定だったのですが。

……ウチの人修羅さんは嫉妬深いんですよ。実は。
ライドウをそんな目に遭わせたら、しばらく創作活動させないから!とか、お怒りに。
自分はあれだけ、イジメ倒しているくせに……。ああ、自分はいいんですよね。自分は。