KO 06



パチ。
一つ目。
開放された襟が、男の呼吸を少し、楽にする。
微かに触れ合わされる、冷たい唇。ほんの少し、かすめるだけの、その繰り返し。

パチ。
二つ目。
開いたそこから侵入した、冷たい指が鎖骨をなぞり、
熱を奪った、少し暖かい唇が、小さな悲鳴を零した男の下唇を、柔らかく挟み込む。


――― パチ、と、ワイシャツのボタンが、一つずつ、外される音が。
悪魔に魂を売った、とまで称される能力を誇る、天才プログラマ「人修羅」の打音のようで。
やっと「服従させられる側」に堕ちた男のCPUをゆっくりと、侵食する。……その耳を媒介に。

三つ目の打音で、チロリと誘うように唇を舌で舐められたときだったか。
四つ目の打音で、至極のコードを創造する指先が、胸をかすめたとき、だったか。

望んで拘束されたままの美しい男は、たまらず、自分からその魔物の口へ喰らいつき。
宥めるように、それを受け入れた彼の優しい腕の中で、夢中で舌を絡めた。

男が、自分の意思で動かせるのは、言葉以外にはそれだけ、であった、から。



◇◆◇




「……んっ」

縛られた男は無論、清童というわけでは、無い。
その年齢とその能力と、その、容貌に比したそれなりの経験値は当然、持っている。

けれども。

(夢の、せい、だろうか。それとも、貴方相手、だから?……こん、なに)
――― 感じる、のは。

「ぁ……っ、あ」

パチ、と、五つ目の打音が。惑う男の”中心”で響く。
魔物の指が、ボタンをはずす動きを知覚して、切ないほどの感触が、その肢体を悶えさせる。
それが違う目的と分かって、いても。触れられたことには、変わりは無い。

「感じる?」
六つ目の音を響かせながら、その男は、問うて来る。
キスを中断して、耳を甘く噛みながら、出題される質問の選択肢は、一つしか無い。

素直な回答に返るのは、嬉しげな響きの声。

「……これも、”七つの封印”、かな?」
じゃあ、生贄の子羊は、どっち、だろうね。君かな、それとも……俺?

不穏な言の葉を落として、最後のボタンがはずされ、
パサ、と開放された布地を左右に開き、下着を通して薄く透ける肌へ降りようとした唇は、止まる。

――― く、す。

そして、響く音は、苦笑。

「これ、はずしてもいい、かな?」
やっぱり、封印を解くと、罰が当たるってこと?
え?と、思うライドウに、由良はそれを、ライドウの首元からスルリ、と引き出して、みせる。

「形見?だったっけ」
「……え?……え、え。……母、の」

形見のロザリオ。滅多と、身から離したことは、無い、その黒い丸い玉と、鎖を連ねた曲線を、
ツと、由良の指が辿り、その先にある、十字架を掴む。

「はずして、いい?」
「は、はい」
再度の問いに、慌てて、そう返す。

考えれば、確かに、危ない。丸い珠はともかく、先端の尖った十字架、など。
自分はともかく、この人の肌まで傷つけるところだった、かも、しれない。
考えるだけで、ゾッとしながら。気を悪くしなかっただろうかと、そっと表情を伺うと。

また、どこか驚いたような瞳。
ライドウが戸惑った表情を浮かべていることに気付いて、ふ、とその瞳は柔らかく笑む。
「ごめん。やっぱり保護者同伴(・・・・・)は、ちょっと……ね」

それに。

縛られるのは、俺にだけで、いい、よね?……今は。……ライドウ、くん?

故意か天然か、相手の熱を一層に煽る言葉を囁きながら、
ジャラ、と、持ち主の頭をくぐらせるように、その封印を抜き取って。

「父と子と……だっけ?」
――― 聖霊の御名において。

そう呟いて彼が、十字架に口付けると、微かな光が闇に散ったように、見えて。



ああ、綺麗な夢だ、と、ライドウは思った。





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※「7つの封印」…ヨハネの黙示録のアレ。メガテンファンには説明は不要……でいいですか?

一応、以下反転。

一般的なワイシャツのボタンは7つですので、不遜ながらもちょっと流用を。
一つ封印をはずすたびに、大いなる災いが起こり、世界の終末が近づいてくるのですよ。
「ああ、災いだ、災いだ」(「七つの大罪」は、また違う作品で使う予定です。はい。)

次からR18。大人の方のみGO!……あ。それと、ホイールマウス推薦w。(何故?)