君をこんなに愛していなければ
君に、狂えたのに
「……あま、い」
「ホットミルク、に、少し」
――― 蜂蜜を。
目の前の、由良の瞳が、一瞬、その琥珀の色に染まった気がして。
愛する男の唇から注ぎ込まれる液体の甘さと暖かさに、うっとりと、ライドウは、溺れる。
蜂、蜜?うちには、無かった……です、よね。
ほら、前に、俺のお奨めのを分けてあげるって、約束してた、やつ。
……そういえば。
小瓶に入れて、持ってきてたんだ。会えたら渡そうと、
思ってて。と、微笑む表情は、とても、夢とは思えないほどに、リアルで。
現実と虚構の、狭間の幸福に酔う男は、もう一度、と、ミルクをねだる。凍えた猫のように。
「……ん」
「美味しい?」
駄賃のように、絡められる舌さえも、蜜のように、とろりと甘く。
……優しい温度の、甘くて白い液体は、この人の、ようだ。と、ライドウは思う。
「もっ、と」
「やっぱり、乾いてたんだね、ライドウ、くん」
嬉しそうな安堵したような哀れむような、愛しい、瞳が。
自分だけを見つめて微笑むことに、痛いような喜びが溢れる。
――― ええ。ほら、分かるでしょう。ずっと、僕は、貴方に、乾いて、いた。
己が作った液体を、己の唇を通して注ぎ込みながら。
白い喉が、コクリと。その液体を、何の疑いも無く、素直に嚥下するのを見て、
由良は声に出さずに、ごめんねと呟いた。
◇◆◇
「ね。腕、痛くない?……ネクタイ、はずしちゃ、駄目?」
由良の左中指に夢中で舌を絡めていた男は、その問いに慌てて、首を横に振る。
……この枷は、きっと、僕を”夢”に繋ぎとめる、縁。
優しい貴方は、僕が繋がれている限り、夢から去ることは、無い。……可哀想にと、同情して。
――― “同情”。
ツキ、と夢ですら痛む心臓が、己の愚かさを糾弾するのを、無視、する。
同情、でも、いい。貴方を繋ぎとめられるなら、どんな汚い手段でも、僕は。
(いつも。いつも、そう思って願っているのに、いつも、貴方は、僕を、離そうと、放そうと、する)
「もう、一口、いる?」
優しい問いかけに肯くと、ぬちゃ、と、蜂蜜が入ったガラスの小瓶に挿し込まれる、指。
自ら開けた口へと、たらり、と落ちてくるそれだけで満足できず、再び指をねだり、舐める。
「……は」
嘆くような、嗤うような、吐息が聞こえて、ほの暗い部屋の中でその声の主をうかがう。
……嫌、だった、ろうか。
「らい、どう、くん」
「は、い?」
かすれた、甘い声。その響きだけで、ライドウの熱は上がる。
……君、どれだけ自分が、綺麗か、分かっててやってる?
「え……?っ、あっ」
何かを耐えるような声と共に、唐突に。
由良の右親指と人差し指が、張り詰めたライドウの中心を、その頂点から麓へと、なぞる。
「んっ、……ぁ」
降りた人差し指だけが戸隠山の難所を辿り、彼の中指はライドウの後ろの門へと、触れる。
「……っん……っ」
クイ、と力を入れられて、少しの圧迫を伴いながら、指がじわりと男の内へと入り。
「あ……ぁっ、ゆら、さ、」
期待と戸惑いと虞と歓喜が入り混じった、嬌声を上げさせる。
(ここも、か)
内の感触を確かめた、由良の眉が微かに寄せられ、ライドウの表情を伺い見る。
――― 菖蒲色の布で白い手首を縛られたまま、感じるままに肌を朱鷺色に染め、
あえかな声で、喘ぎながら、その身を淫猥に捩じらせて揺らす、魔物のように美しい……人。
(……月夜より、美しい、か。……確かに。最強の)
「あ…………。ひっ……んっ」
宥めるように、優しく。けれど突然に抜かれた指が、再び。
ひやり、とする温度と、ヌル、と独特の触感を伴って、そこをゆっくりと。
侵し始める。
……蜜を、塗られているのだと、理解して、縛られた男の熱は更に上がった。
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猫にミルクは本当は駄目らしいと聞きましたが。お腹壊しやすいので。
以下、一応、反転。
甘い……。……まあ、たまにはいいかと。後、蜂蜜とミルクは暗喩ってことで、お願いします。
蛇足ですが、戸隠山の難所は、蟻の門渡り(蟻の戸渡り)のことです。ホントに蛇足で申し訳も。