ぐ ち ゅ 。 ち ゅ ぷ 、と 。
”何か”を、混ぜるように。かき出すように動く指の動きは、優しすぎて、余計に辛い。
「あぁ……っ、ん、やっ、ぁ……っ」
にゅる、と、抜き挿しされる、右中指は、時にクイと関節を曲げて、男の喘ぎ声を誘う。
「気持ち、いい?」
――― 苦しくない?
先の問いにコクリ、と、後の問いにフル、と首を動かしながら、ライドウの思考は惑う。
(ああ、ずっと、こうして、いて、ほしい、でも)
(どうして。この人は、僕に狂わない?僕と繋がらない?)
(……これまでの相手なら、もう、とっくに堕ちて、僕の虜に、言いなりに……)
……これまでの“相手”?
ビクリと、身体が震え、ゾクリと、背筋が凍る。故の分からぬ、恐怖と、嫌悪、で。
「……ね、ライドウ、くん」
彼の乱れを知っていて知らぬ振りをする男は、左の親指でライドウの唇をなぞる。
続く言葉におびえるライドウは、いつか聞いた幻聴を知る。
(お前、俺以外のヤツと何回ヤッタの? )
「どんな、夢を見たのか、教えて?」
聞きたくない台詞を上書きするように、由良はそう尋ね、唇をそっと重ねてくる。
その右手が、ライドウの内を穿っている、とは思えぬ清浄な態で。
「……え?」
「悪魔に、襲われたって、言ってた、よね」
◇◆◇
塗っておくと、いいよ。
蜂蜜、を?
うん。リップクリーム代わりに。
そう、囁いて。喘ぐライドウの唇に触れる、蜜を絡めた、由良の左指。
しばらくは、俺が舐め取る暇が無いと、思うし。
耳朶に言い訳を落とされて、ゆっくりと始まる、講義。
「禁止線を飛び越えて、悪魔に出会ったの?」
……それで、殺されそうに、なったんだ?悪魔の快楽を与えられながら?
ふうん、と考え深げに、由良は首を傾ける。ライドウを愛しながら。
「……じゃあ、バタイユ、だね」
「バタ……イユ?」
聞き慣れぬ言葉をライドウは復唱する。由良に嬲られながら。
「フランスの哲学者、だよ」
「てつ……が……くぅ……っ」
中で蠢く指の絶妙さに、のけぞったライドウの喉が震え。
その振動を楽しむように、白い喉に口付けて、由良は説明を、続ける。
「恋愛、とは“聖なる狂気”である」
ああ、最初にこれを言ったのは、プラトンらしいけど。……バタイユの説を簡単に言うと。
「触れることが禁じられている美しい肢体に触れて」
君のことだね、ライドウくん、と、鎖骨を舐め上げながら、嗤う。
「その“禁忌”を破って」
後孔を穿つ指を増やされて、高い声を上げる男の胸を、優しく撫でる。
「そうして、」
ゆっくりと、体位を変え、由良の口元はライドウの中心へと下る。
「侵して、犯して、その美を”穢す”ときに、起こる、すさまじい快感」
囁きながら伝い降りる、吐息が舌が音が、繋がれた男を追い詰める。
「その快楽こそが、“聖なる蕩尽”。そして、その快楽を得る一瞬が」
――― 生きることの”真実”なのだと。
「ぁあっ!あ!」
講義を止めた由良は、ライドウの中心を掴み、
つ、と、指に残る、彼の唇に塗った、蜜を塗りつけて。
舐めた。
◇◆◇
彼の舌で男根をねぶられながら、彼の指で内を嬲られて。
今まで、ずっと、焦らされ続けていた男の体は、一気に熱を上げる。
「っぁ。……っ」
跳ねる肢体の、余裕の無さを分かっていたのか、何のためらいも無く、深く、口で愛されて。
いけない、と、感じたときには、もう、由良の喉元が、コクリと何かを嚥下する音を小さく立てた。
「あぁ……」
ぬちゃ、と粘着質な音を立てて、指が引き抜かれる。
は、ぁ、と余韻に震えながら溜息をつくライドウの脚を、屈曲させ。
由良は、蜜でまみれた、後孔にぴちゃりと熱い水音を立てる。
「ゃあっ!……ゆ、ら、さぁ、」
塗りこめた蜜をすすり上げるように蠢く舌。胸と男根に絡められる指。
すぐに反応を示す己の中心を厭いながらも、ライドウはこの夢が覚めないことを、祈った。
何度も、容を変えて、繰り返される快楽。
幸福な、苦しいほどに幸福な脱力感に沈みながら。
ライドウは、由良の衣服が、乱れていないことに、気付く。
指と、舌と、唇とで、深く愛してくれているけれども、繋がって、いない、ことに。
「由良、さん」
「……なあに?」
「服、よごれ、ま、す、から」
今更な言を吐き、続く言葉を濁して、ライドウは答えを待つ。
願うことは、許されるだろうか。
脱いで、ほしい、と。もっと、彼の肌に、触れたいと。深く、繋がってほしいの、だと。
服を着たままの彼に、愛されるのは、どこか不道徳感を伴った悦びを産むのはまた真実だけれど。
だが、返るのは、困ったような声。
「……ごめん。俺」
謝罪の言葉を落とし、少しの逡巡の後に、小さな声が。
醜い、から。
え?
哀しい台詞を落とす。
「俺、何度も手術してる、から、体、傷跡だらけ、なんだ」
だから、ごめん。あんま、見られたくない。
「……あ」
――― 傷つけた?
ああ、そんな哀しい笑顔を見せないで。その諦めた笑顔は何よりも僕を、壊すから。
許して、ください、と。焦り、惑う思考が、突如、グラリと眩暈を起こす。
……え?睡魔?
眠い、だと?……“任務中”に?……この“僕”が?
戸惑うライドウの視界には、ほっとしたような愛しい男の、笑顔。
「そのまま、寝てしまって、いいよ。ライドウくん」
「由良、さ、ん」
……まさか、さっきの、蜜は。
「大丈夫。寝たら全部夢に、なってる。嫌なことは、何もかも」
いつかどこかで見た優しい優しい笑顔と声に、ライドウは絶望を知る。
ああ、また、この人は。
――― 僕から、逃げる。
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一応、反転。
ええと。つまり。狐(つーか烏?)と悪魔の化かしあい、なんです。現代パロ。
それにしても、ですね。
えええええええー!寸○めですか!!据え膳食わなくても恥じゃないよ、ですか!!
みたいな感じで「やりましょうよ」「やらないよ」「そう言わず!」「駄目」
「いやだってライドウさんも」「……これが彼のためだから」「……そうですか」
とか散々交渉したんですけどね……。すみません……。