Weiß(白) SRW ライドウ編 4






夜、って、いつまで、なんだろう。
朝、って、いつから、なんだろう。
この夜が、ずっと続けばいいのに。ね。







薄く、薄く、窓から届く、冬の朝の光。
微かに。本当に、微かに、聞こえる、鳥の声。

朝を告げる全ての鳥を、縊ってしまいたいと願う男の。
ぴくりと、動く、優しい腕の中で、悪魔の小鳥が残酷に鳴く。

「夜が、明ける、ね。 」
――― もう、夢は、終わり、かな。

寂しすぎる笑顔に耐え切れず、男は問う。

「・・・これで、最後、ですか?」
「・・・」
「教えて、ください。これが、僕が、ココで、貴方に会える、最後、ですか? 」

聡明な男は理解をしている。
この優しい悪魔は、もう二度と。
他者を、何よりも己を、巻き込んだと、自覚する、今回の愚を繰り返すことは、すまい。

では、代わりにどんな手段をと。
予測できるその代替行為を思って、男の思考は恋情と嫉妬と、己の無力さに狂う。

「・・・そう、だね。きっと、もう、夢は、見ない」
「僕が、見たいと、願っても、ですか」

憤る男に、返るのは、こくりと肯いてみせる、笑顔。

「ごめんね、ライドウ」
「謝って、ほしく、など」

雄弁に苦痛を語る黒い瞳に反して、ただ凪いだ湖水のような悪魔の瞳は何も、語らない。

「ライドウ、これは、夢だよ」
「分かって、います」

「夢は、現実には、ならない」
「・・・分かって、いま、す」

夢だから、きっと、すぐに忘れられる。でも、お前が辛いと思うの、なら。

「忘れたい?」
「いいえ!」



思えば。
やがて落とされた断罪の言葉に、男が返した、この言葉だけが。
この夜、悪魔が唯一適えてくれた、男の本当の望みだったのかも、しれない。





◇◆◇





「無事に着いた、みたいだね」

彼の帝都へと、”彼”を送り返し。
良かった、と呟いた悪魔の唇は、もう、別れたばかりの愛しい男の名を、紡ごうと、する。

ライ、ドウ。ライドウライドウライドウライドウライドウライドウライドウライドウライドウライドウ

その名のみを叫び続ける心臓は、悪魔の喉を凍てつかせ、無理やりにその音を響かせようと、し。

「ラ・・・」

「呼んだかい?」
「イ・・・・・・ルイ?」

何事も無かったように振り向く悪魔は、優しく微笑む己の保護者を、きょとんと、見る。

「お待たせ。やっと、忌々しい時間が終わったよ」

何のことか、と、小首を傾げるシュラの身体を一瞥し、面白げにルイは笑う。

「おやおや、またこれは、えらく魔力を消耗した、ものだね。疲れた、だろう」
(クスクス。いつもながら、彼の執着は僕ですら、恐れおののくほどだよ)

「おいで、シュラ。・・・”傷”を、治してあげるから」
(でも、来年からは、僕と過ごすことにもう異存は無さそうだね。可哀想な優しいシュラ)

そう、いつものように優しく呼びかける、”育ての親”に抱かれる悪魔の身体には。
もう、他者が残した、痕跡は一つも、残っては、いなかった。




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「イ」しか合ってないです。閣下。