Auf Flügeln des Dämons 10ー2



ね、シュラ。

ん?何、ルイ?

森で・・・迷子の、寂しい、白い狐 に出"遭"ったら、連れて帰ってきてもいいよ。

迷子・・・って、ことは親とか兄弟とか、友達、とか。・・・探してるんじゃないのか?

どうだろうねぇ。・・・お前は、"そう"、だったかい?僕の、迷子の、寂しい、黒い豹

・・・。

くす。気をつけて、おゆき。・・・狐に、化かされない、ように。





◇◆◇



黙って目を瞑り、俯いてしまったライドウの頬に、冷たい感触が走る。
瞼を閉じていても、うっすらと映る、ほのかな、柔らかい、の、光。

「お前も、寂しいの?」
す、と頬をなでられながら、問われて。人に返せる言葉は、無い。

何度か、頬を、顎の輪郭をそっと撫で上げてから。悪魔の掌は、人の頬を包んで、動きを止める。

そして、その唇から、零れ落ちた名は。

「・・・ルイ、が、」
悪魔召喚師をビクリ、とさせる。

「言ってた。俺は、誰も、愛せなかった、残酷で寂しい、生き物、だったって」

だから、拾って、僕の子(あくま)に、したんだよって。

「ああ、ルイって、俺を拾って、養ってくれてる、まあ悪魔の大将みたいなヤツなんだけど」
知っている、とは言わずに、黙って、その先を、ヒトは促す。

「ここに来る前に、そいつが、言ってたんだ。俺と同じぐらい、寂しいヤツと会えるかも、って」

微かに、ヒトの口角が上がる。所詮は、掌の、中、か。・・・だが、それで、いい。

「出"会"ったら、連れて帰ってきても、いいよ、って、だから」

――― 貴方が、その掌の中から出られないなら、僕が、中に、入ればいい、だけの、こと。

「だから、俺。お前を連れて帰りたく、なる前に。・・・早く、帰ろう、と」
思ったのに、と、続く言葉は、乱れた息に邪魔をされて、途切れかける。


は、っと、気付く。苦しそうな、声。いつの間にか、瞼に映る色は、

慌てて、瞳を開けて。今にも崩れ落ちそうな、その身体を支える。耳にかかる息は、荒い。

早く、帰るために、何か、無茶を?
思い当たり、舌打ちをしそうになって、止める。

さっきの、髪、か。
おそらく本来なら時間をかけ自然に融合させるモノを、無理に他者の介入で力を断ち切って。

考えながらも、呻いて、苦しみに耐えようとする悪魔の痛々しさに、心が悲鳴を上げる。
ああ、なぜ、気付かなかった?なぜ、僕は、いつも、貴方に、傷を、つけるのだ。

――― そして、なぜ、貴方は、いつも、僕から。

「・・・僕のため、と言いながら、僕から逃げるのは、もう、やめてください」

驚かさぬように、そっと耳元で囁くとぴくり、と肩が震える。
震えを止めたくて、そっと抱いたはずの腕は、意に反して強くその身体を抱きすくめた。

腕の中で戸惑ったように揺れる赤い瞳が、欲しがっているモノに気付いて、与えようとすると。
やはり、ふる、と悪魔が、頭を揺らす、から。

お願いです、と。また、繰り言をヒトが落として。
だから、それは、礼じゃない、という音は言葉に出来ぬまま。

――― 愛を告げることができない、熱い唇に奪われる。

「逃げ、ないで」
微かに抵抗を示す、手首を優しく拘束され。

「お願い、です」
見開かれた赤い瞳は、ゆっくりと閉じられていく黒い瞳に連動し。

「もう、僕を、置いて、いか、ないで」
白い狐に絆されて、闇の獣は闇の中で闇に落ち。

(おめでとう。・・・やっと、つかまえた、ねぇ)

――― 自分のモノではない、誰かの笑い声を耳にする。

(逃げろ)
(お前は、お前、だけでも)
(逃げ)


尚も叫ぶ、優しい悪魔の良心は、愚かな白い獣の深い口付けに溶かされて。

聞こえる声は、一つに、なる。



「「「――― もう、逃がさないよ」」」



やがて、赤い明滅が、ゆっくりとへと変わり。
その代わり、のように、紅く染まった口唇の上で、そっと、唱えられたヒトの願いは。













叶えられた。









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誰が誰につかまったのやら。