奥様は混沌王(にゃんこ編) 02



「カオルさんのうわきものー!」

『お、落ち着け!ライドウ!!正気に戻らんか!!!』
「・・・な、何?・・・ラ、ライドウ?・・・え?カオルちゃんって、こ、この子が?」
「ふ、ふにゃ、ふにゃああ〜(も、もう、この人いやぁ〜)」


さて。
あの後、ものすごい勢いでカオル猫を抱え上げ、陰陽葛葉はおろか、大人気なくもコルトライトニングまで抜いて築土町のヌコ達を全員敵に回したライドウと、その腕の中でまたもや記憶の無いトラウマに怯える子猫、そしてそれを何ともいえない視線で見ていたゴウトの、一人と二匹は。
若干の紆余曲折はあったものの、何とか無事に銀楼閣までたどり着いた。

ここまで来れば、一安心。所長が定時に来るはずも無し、しばらくはカオル猫とあんなことやこんなことやそんなことを、と、思考をめぐらしたライドウは、街中で暴れたことへの説教を、と後から追いかけるゴウトと共に、先ほど汚れた手を洗いにその場を離れ。

数分後、帰ってきた彼らが見たものは。

「何、この子〜!めっちゃ可愛いー!!」と頬を緩める鳴海所長と。
彼に撫でられて、クルクルニャ、と頭をすい、と鳴海の掌に擦りつけるカオル猫の姿だった。



「うわきものうわきものうわきものー!!」
結婚するとき、僕には“浮気したら即離婚だから”とかおっしゃったくせに!
うあぁ、なんて可愛いことを言ってくれるのですか!と悶絶している僕にバックアタックで。

「浮気の定義は、”異性に体を触られたら”、とか思いっきり限定したくせにー!」

知ってますか!その条件を聞きつけて、何かあれば即、貴女に報告して僕達を別れさせようと、
僕にずーっと張り付いているパパラッチ悪魔が山ほど居るんですよっ!!
男性体の貴方のファンの女悪魔が突進してくることまであるんですよ!
ええ、見つけるたびに全部退治してますけどねっ!!
毎日毎日僕がどれだけ必死に、異性との接触を避けてると思ってるんですか!

「な、なのになのになのに、貴女ってば、所長なんかに簡単に肌を許して・・・っ」
おまけに、ああ、その激的に可愛いクルクルニャは何ですか!クルクルニャは!!

「貴女が啼いていいのは、僕の腕の中だけでしょうっ!?カオルさんーっ!?」

「・・・あ、ああ、ダメだよ。ライドウ。子猫をそんな持ち方しちゃ〜」
即行で奪い取った子猫をガクガクと揺さぶりながら、叫び続けるライドウを見かね。

ほ、ほらほら、嫌がってるじゃん。と、恐る恐る鳴海は進言する。

「えーと。ほら、あれだ。シュラちゃん・・・じゃなかった、カオルちゃん本人のさ」
鳴海がその名を呼ぶことに、ピクとする心の狭いライドウに気付かず、鳴海は続ける。

「彼女の撫で方を思い出して、やってみたら〜」
もう絶妙でしょ?力の入れ具合とか、指先の触れ具合とか、リズムとか〜。

「耳の裏からうなじに、ゆっくりすべっていく薬指の先の感触、なんて、もう」
犯罪的だよね!と、絶賛した鳴海は室内の気温が急降下していることを感知して、己の失言に青くなり。 ・・・慌ててそのうっかりさんな口を自ら塞ぐが、時、既に遅し。

「・・・非常に興味深いご助言、感謝いたします。鳴海さん」

でも。
「一体、いつどこで、僕のカオルさんに耳の裏からうなじまでゆっくり触れてもらったのか」
じっくり聞かせてもらいましょうか、と、
鳴海のこめかみに冷たい銃口を当てながら、魔性の笑みを浮かべるライドウは。

己の左手にしっかりと抱きかかえたままの、カオル猫の自分への友好度が、
めでたく本日の最低値を記録更新したことにまだ気付いていなかった。


そして、暫くの後、ライドウは思い知る。

・・・機嫌を損ねた御猫様に逆らえるモノなど、この世に存在しないという真実を・・・。


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つ、続いてすみません・・・。