奥様は混沌王(にゃんこ編) 03


「カ、カオルさん?」
「・・・」(ツーン)

「あ・・・の、・・・う、疑ったわけじゃ、ないんです、よ」
「・・・」(ツンツーン)

「だ、だって、酔いつぶれた鳴海さんを介抱したなんて、貴女一言も・・・」

(一言でも言った日には、お前の嫉妬が炸裂するから口止めしてたのだろうが・・・)
そう、予想をつけるゴウトは、子猫に平身低頭謝りまくる14代目の姿に溜息を、つく。


そして。
縋りつくような声で己の名を呼ばわる、美しい青年をまるっと無視し。
五月蠅い、と言わんばかりに、ポンと尻尾を打ち付けて、可愛い子猫はそっぽを向く。
飼い主という立場なら、実はこれはこれで最強萌えレベルの「御猫様ご機嫌斜め状態」なのだが。

「カオルさん〜。何度でも謝りますから、どうか、こっち向いてください〜」

何と言っても、この「奥様」いやヌコ様は混沌王w。
このままの印象で元に戻った日には、魔界という実家に帰られてしまうのでは、そしてそのまま
二度と会えないのでは、というリアルな危機感を持つ夫には恐怖以外の何ものでもない。

『・・・少し、落ち着けライドウ』
どんどんと崩れていく14代目のイメェジを見ていられなくなったか、ゴウトが助け舟を出す。

「ゴ、ゴウト。・・・し、しかし」
『落ち着いて・・・アマラ深界を思い出せ』
「アマラ深界?」
『・・・あのときの己の所業を思い出せ』
「?」


・・・詳しい描写はアレなので、省きたいと思うが。この男。
初対面のカオル(当時はシュラ)にいきなり喧嘩を売りつけ。日本刀で切りつけるわ、仲魔はけしかけるわ、 拳銃でブギウギするわ。その後も待ち伏せては、追い掛け回し、訳の分からないスイッチゲームを強要し・・・ まあ、とにかくやりたい放題の犯罪行為をした実績がある。
(いくら半分悪魔でも、後ろから”頭を狙って”撃ってくるなんて、人間のできることじゃないと思うのは・・・当時のシュラだけではないだろう・・・)

『あの筆舌に尽くしがたい悪鬼のごとき所業にも関わらず、仲魔になってくれた相手であろうが』
(それどころか、お前の24時間求婚攻撃に耐えかねて、うっかり結婚までしてくれた心の広い悪魔であろうが!・・・とまでは、言わないゴウトである)

「で、でも。あれは、ゴウトも」
『・・・言っておくが、我は挑発ぐらいしかやっとらん』
それも猫好きのシュラにとっては、むしろ至福のひとときになっていただろうが、と返されて黙り込むライドウは、スイッチゲームの“真の悪役”がこの黒猫であったことを忘れている。

『だからだな、これぐらいのことで』
嫌われることはきっと無いから、安心しろ、とゴウトが言い終わらぬうちに。

「分かりました!」
と、14代目は叫んで、反省する。

「もっと追い掛け回して撫で回して愛撫しないとダメだ、ということですね!カオルさん!」
・・・明後日の方向に。

普段なら朝から晩までやっているのですが、子猫だからと遠慮していた僕がいけないのですね!
ああ、それならそうと早く言ってくれれば、どうしていつも貴女はそう遠慮深いのですか・・・。
いえ、そこが貴女の美徳なのですよね。アノ時も、イイのに、ダメとしか言わないんですから〜。
奥ゆかしいのもいいですが、過ぎると罪ですよ。ええもう貴女はホントに存在自体が罪・・・。


そんな、訳の分からないことを言いながら、飛び掛ってきた美青年に。
ついに堪忍袋の緒がぶちぎれた子猫ちゃんのアイアンクローがかまされたことは

想像に難くない。


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す、すいません。次こそ、次こそはニャンニャンを!