陽と陰が入れ替わる、黄昏時。
ライドウとゴウトは再び、その地に戻ってきた。
「サブの言った通りの刻限、だな」
『うむ』
界の層がライドウ達の前で揺れている。これまでの被害者は、知らずこの層をくぐり、同一にして
異なる界へとたどり着いてしまったのだ。おそらくは、そのシロも。
「行くぞ、ゴウト」
その言葉と共に、ライドウは既に慣れた異界のどろりとした大気へと、その身をさし入れた。
「・・・あれか」
憎い、にくい、ニクイと、声にならぬ響きが伝わってくる。
くね、ゆら、と。その長い体で、∞の文字を描きながら、その悪魔は怨嗟の声を洩らす。
「「オ前モ、同ジ目ニ、遭ワセテヤロウ」」
「「地中ニ、首ダケヲ出シテ、埋メテヤロウ」」
「「口ノ届カヌ所ニ、水ト食イ物ヲ、置イテヤロウ」」
『蟲毒、か』
ゴウトは眉を顰める。
それは昔より伝わる、特別の力が無いモノでも、形式上は可能な呪。
生き物を極限まで苦しめることで得られる怨嗟の念を利用する、おぞましい技。
「お前の主はどうした?」
「「喰ッテヤッタ」」
――― あんなに、オレを可愛がってくれたのに。毎日、頭を撫でてくれたのに。
主は、自分の怨みを晴らすために。オレを、「こうするためだけ」に「そう」していたんだ。
蟲毒は、その行使者と深い愛情を交わしていたモノほど、強い魔となる。
強い愛ほど、強い憎しみへと変わりやすい、ために。
そして、その強さを制御しきれなかった場合は。逆に行使者自らが喰われる。
・・・人を呪わば穴二つ、であるのに。ヒトは変わらぬ、いや変われぬのか、とゴウトは思う。
「「オ前モ、喰ッテヤロウ!!」」
言うなり飛び掛ってきた初撃を、瞬時に抜いた退魔刀でガードし。
トンと間合いを取ったライドウは、コルトライトニングの銃撃で悪魔を足止めする。
「「ナ?・・・オ前ハ?!」」
怯んだ隙を逃さず、オンモラキを召喚したライドウは、その銃弾に「火」の力を混める。
ダンダンダンと打ち込まれた、弱点となる「火」の弾に打ち抜かれ。
だらり、と。悪魔はその細長い体を、地面へと横たえた。