サクラモリ 06



♪チャーチャッチャカ、チャーチャー。チャーチャッチャカ、チャーチャー。


「こんな感じじゃなかった?アイツと戦ってるときのアレ。シュ、じゃなくてカオル?」
「うーん。そんな気もするけど。私、あの時とにかく怖くて、曲聴いてる場合じゃ・・・」
「あ、ずるい。俺 その曲、聴いてないのにー。いいなぁ、二人ともー」

心底、羨ましげに呟く静夜を見ながら
((そう言う、お前がうらやましいよ!心の底から!!))
と、胸倉掴んで、ガタガタしたい衝動を、必死で抑えるキョウとカオルである。

「つーか、俺的にはむしろさぁ・・・ほら、歌いにくいんだけどアイツが本気だしてからのさぁ」
静夜が口ずさむ、小難しいギターちゅいんちゅいんフレーズを聴いて、残りの二人もあぁ!と叫ぶ。

「分かるけど、今の氷川さん、触手無いから。ちょっと迫力が・・・」
「ん?何言ってるんだよ、カオル。・・・あるじゃん、ほら、前髪に、さぁ。くくっ」
「ひっでー、キョウ。・・・アイツああ見えて、ちゃんと触手持ってるんだぜー」
「「え?・・・静夜、それホント??」」
「うん」

夜になると(・・・・・)出てくるんだー、と、しれっと不穏な語を呟く静夜を二人は全力でスルーしておく。
ちなみに戦ってないはずの静夜がなぜその曲を知っているのかは・・・大人の(・・・)事情があるのだろう。

そんな恐ろしくも和やかに、現状のベストBGMを検索する3人の人修羅の目の前では。
黒い青年と、赤い外人と、夜になると触手が出てくるという男が、三すくみで睨みあっている。


「えー。さてー。このレースのオッズはどんなもんですか?解説の響さん」
「そうですね。静夜アナ。本命黒2、対抗赤3、大穴触手7ってところじゃないでしょうかねー」
「なるほど、黒と赤は現役バリバリ。しかも一度、触手撃退済みですしねー」
「・・・あ。でも、私。触手倒すときに、ライドウ連れて行かなかった・・・」
「おお、ここで、意外な情報が!!触手、有利かもしれません!!!・・・え?でも、何で??」

アイツ、あんなに強いのにー?と、不思議そうにする静夜の声に
「ちょ・・・っと、事情があって」
困ったようにシュラ、いやカオルは俯き。

「事情?あの黒いのが、触手のウニョウニョ系が苦手だったとか?」

これまた不思議そうにキョウがカオルに問いかける、が、返事が無い“沈黙”で何かを察したか。
件の沈黙の世界の創世主が、現状を打破するありがたくも素晴らしいボケつっこみを入れた。

「なあ、どうでもいいけど、触手触手って・・・たまにはアーリマンって呼んでやれよ」

「「・・・お前が言うな!!静夜!!」」



・・・さて。今更に過ぎるが、現状を説明しよう。
実は、ライドウが不在の間、愛しい妻が残る家の周りには、そんじょそこらの悪魔なら瞬殺される
ほど強力な結界が幾重にも施してある、という。のだが。

「ああ、そういえば、何かあったあった!何だか、こしょばいなーとか思った」
「うんうん。ピリッとしたから、静電気かなーとか思ってたけど」
「・・・」

・・・あっさりと破壊されたそれに気付き、その場で仕事を全部鳴海に押し付けて、この短距離にも関わらずコウリュウまで召喚し、文字通り飛んで帰って来た夫が目にしたのは。

――― 間男(笑)の山。
しかも内二人は奥様に抱きついて押し倒す寸前。(注:ライドウビジョン)

何しろ、愛しい奥様のことになると、帝都一、堪忍袋の緒が惰弱なこの男のことである。
状況把握もあらばこそ、まずは抱きついている輩から天誅!と攻撃をかまそうとしたところ。
・・・当然ながら、残る二人の桜守が、己の花を護りに入り。

現在、3人とも動けぬまま、膠着状態なのである。


「あー。でも、付き合ってられないから、私ちょっと水屋に行ってくるね」
「水屋・・・って、ああ、台所のことか」
「何するのー?もうお茶はいいよー、お茶菓子もお手製?美味しかったー」
「ありがと。ああ、でも、・・・お弁当、作ってる最中だったの」
「「お弁当??」」

そして、カオルが水屋へ入り、しばらくした後。

「アチ」

という、可愛い小さな声が届いた瞬間に、その黒赤触手の三つ巴膠着状態は解除された。





◇◆◇




はらり。

はらはらと、花弁が宙に舞う。

「山桜、か」
落ち着いた静かな男の問いに、返るのは涼やかな青年の声。

「ええ。・・・もう、帝都の染井吉野は見ごろを過ぎましたから。」

それより、先ほどは知らぬこととはいえ、失礼を、と頭を下げる黒衣の青年を見ながら。
いや、考えれば、主の許可も無く不法侵入を・・・こちらこそ申し訳ない、と氷川が返し。
No problem at all!気にすんな!!と、赤い服の外国人は笑い。
今日もまた縮みようの無い寿命が縮んだ黒猫は・・・呆れたようにあくびを一つ。

そんな彼らの前で、戯れるのは。
楽しげに語り合い、笑いあう、同じ色、”同じ形”を持つ3人の花。

「でも、何で、男性体に戻したんだ?」(人妻美少女ってのも、いい眺めだったんだがなー)
と、また戦闘になりそうな本音を隠してダンテが問うと。
「・・・”兄”と分かっていても、己の妻が他の異性と戯れる、というのは許せるものではありません」

でも。“家族”と、共に心から嬉しそうに笑う、かの人を見たかった。
・・・だから。

その、想いは、同じである故に、この地に来た男達は。
自分達と同じ苦悩を持つ、同じように心の狭いその美しい青年を、苦笑して、見やった。







※ 分岐、と 言いますか。ダーク要素が入るページがありますので。
 回避ルートを作ります。お好きな方へお進みください。

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いや。バックアタック率とか混乱時のマッカの額とかはね、静夜君が一番大変だったんだけどね。

そして、改めて全試合を観戦すると・・・やっぱり黒マントが一番極悪だと思うんだ!!
いきなりミ○ャグ○サマぶらさげてくるとかね!・・・アンタね!!