SRW 04



もう、いや。

もう、いやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!
イヤなことはイタイことはカナしいことは、もう、いや!

このせかいはこのからだはイタイこと、ばっかり!!
ぜんぶ、こわして、ぜんぶ、つぶして、ぜんぶ、やりなおせば、きっと。

アイツとあったこともぜんぶわすれて、ぜんぶけしてしまえば、きっと。

らくに。



「シュラ!」

だれ?

「シュラ、しっかりしてください!」

だれか、よんでるの?

「もどって、きて、ください!」

どうして、よぶの?もう、すこしで、おれをぜんぶ、けせるのに。

「シュラ!!・・・あなたがきえれば、ぼくもきえますよ!!」

え?

「ぼくも、きえます。あなたが、いないのなら、もう、ぼくも」

だめ。・・・だめ、だよ。おまえは。きえちゃ、だめ。

「そう、思うなら、もどって! もどって、きて、ください!!」





◇◆◇




気付くと、部屋のドアが開け放たれて、いて。
ドアの横には、何とも表現のつかない表情で、微妙に視線を合わせようとしない”兄達”が、いて。

(あれ?俺、待ちくたびれて寝ちゃってたの、かな。ここベッドの上、だよね)

「・・・静夜。キョウ。・・・返って、きたんだ」
そう言う、俺の耳の横で聞こえる、大きな、溜息?・・・ほっとしたような。

(え?・・・誰か、もう一人居る、の?)
そ。そういえば、体、何だか動かない、けど。
え・・・と、何かに束縛されてる・・・つか、抱きしめられて?・・・ベッドで?(汗)

「・・・キ、キョウ。静夜・・・こ、これって」
何となく、確かめるのが、怖くて。視線を動かせないまま、兄達に救いを求めてみる。

「あー、と。・・・ソレ、俺たちからの、クリスマスプレゼント」
なぜか、赤い顔で視線を逸らしたまま、静夜が答える。・・・棒読みで。
(だから、アテられるの確実って思ったんだよ。ホントにコイツ、信じらんねー)

「・・・黒猫さんには、ちゃんと説明して明日の朝には返すって言っといたから」
なぜか、青筋をピクピクさせながら、キョウが答える。・・・表情の無い音で。
(人目もはばからず、シュラが正気に戻るまで延々とキスしやがって、この野郎)

・・・まあ、お陰であっという間に沈静したのだけれど。あの悪夢のような状況が。

頭では、そう理解できるのだが。

((・・・この涼しい顔した黒を纏った凄絶な美人のデビルサマナーさんってば))

劇的にかわゆい幼児シュラ(推定年齢5歳)に飛び掛って押し倒して躊躇すらせず、延々と。
聞きたくも無い水音から察するに、即行で舌を入れやがりましたのも確実で。・・・幼児に。

ディープなそれを受けながら、ゆっくりと本来の形態に戻っていくシュラの漏らす声が。
幼い高い”それ”から、どこか甘く、少し低い妖艶なものに変わっていくのまで詳細で。

白い服のシュラを抱きしめた黒い腕が、白い指が、マントの中でぞわり、と蠢くのも。
赤い、危険色を光らせていたシュラの紋様が、やがて違う意味で危険な色に変わるのも。
何だかとっても見てはいけないものを見てしまった感が満載なほどリアルで。

ついでに言えば、ホテルだわスイートだわベッドの上だわクリスマスだわ。

(ものすごい濃いエロビデオを徹夜で見せられたような気分だよ、俺)
(・・・シジマでそんなことできるのかよ・・・。まあ、俺も、同感だけどさ)

創世を果たした人修羅達ですら、困ってしまう状況下に。
まだコトワリを啓かぬシュラが、まともに対応できるはずもなく。

「んー、じゃあ、お邪魔虫は退散するわー。ごゆっくりー」
「だね。じゃあ、未来の帝都を守るために、一晩中離さずによろしく。帝都の守護者サン」

分かった、と即答する、耳の横で聞こえる声に、ゾクリと背筋を冷やされ、全身をBindさせられる。

「とりあえず、ルイんとこは今から俺らでご機嫌伺いに行ってくるわ」
「少なくとも、今晩は邪魔させないから、・・・安心して」

固まったままのシュラににこり、と手を振って、パタン、とドアを閉めて。兄達は溜息を付く。

(つーか、絶対さぁ、ルイもさぁ)
(・・・うん。ホントはこの二人をセットで欲しいんだよねぇ。素直じゃないから、あの御方)

(綺麗、だもんなぁ)
(うん。それぞれでも綺麗だけど、二人揃うと、犯罪的に綺麗、だよね。響きあって)

(お。さりげなく自分の本名、出しましたね?響くん)
(・・・な!・・・もう、くだらない突っ込み入れないで、とっととルイんとこ行くよ!)




◇◆◇




危険で優しくてお節介で綺麗で最強な兄達が、去った後。

ベッドの上で、黒衣の召喚師の腕に束縛される、人修羅が纏うのは。

綺麗で淫らで清浄で。
残酷なほどに無垢で穢れないようでいて、実は全ての色を内包する混沌の色。

そして、同じ色を持つ、そのヒトの指が、肌が、嬉しそうに、その白を暴きはじめ。
驚きに見開かれた金の瞳が、口付けるために寄せられた、愛しさに細められる黒い瞳を映し。

「・・・ラ、イ」

兄達がくれた、恐ろしいクリスマスプレゼントの名前を呼べるのは。






再び、始まった、甘い深い口付けが、止まった、後。






Ende



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以下は各々の派生プチ話。好きな方の世界へどうぞ。


「大した化け物だよ、君は」:ツンデレほんわか司令
 
「ココから先はR指定だ」:お察しくださいな攻ダンテ

「・・・」:甘くて苦くて辛くて熱くて冷たくて白い恋人達